2008-12-13

することがいっぱいあるのに  NO 2327


 水曜日の朝、友人の喫茶店で時間を過ごし、商店街を弊社の葬祭式場に向かっていると「おはようございます。先に行っております」元気そうな女性の声、自転車で式場に向かうスタッフだった。

 まだ人通りの少ない時間帯だが、自転車事故の多い昨今、この12月1日から自転車での走行中の携帯電話使用も法律で禁止されたが、「本当!」「知らなかったわ!」という人  達が少なくないようだ。  

 さて、式場へ入った。今日はご導師が副導師を伴われて来られるそうで、宗教用具の準備セッティングのチェックが済まされ、女性担当スタッフ9名と男性1名でのミーティングが行われていた。

 それが終わってからの報告によると、火葬場から御斎の会場までご導師と副導師のお二人がご一緒くださるそうで、お骨あげを済ませて式場に戻られ、初七日法要を終えられてからご解散というスケジュールだった。

 修験道の世界で著名な宗教者であられたが、その宗教者らしいお人柄に「悟り」的は極めて自然のやさしさが感じられ、すぐに始まる葬儀がどんな世界になるのだろうかと緊張する私だった。

 司会台に資料を準備手くれている女性司会者がおり、ご導師がくださったという式次第の流れを書かれた「差定」には修験道と密教独特の文字が幾つも目に留まり、弔電代読やナレーションの流れにあって「間」を空けないシナリオ重視を確かめ合って本番が始まった。

  入場時の「開式の辞」の前、そして閉式の前には副導師さんがご用意されていた「法螺貝」を鳴らされた時の式場には、言葉で表現出来ない特別な環境空間が生 まれ、熾烈な苦難を強いられる修験者の「行」にあって厳しくて過酷な「奥掛け修行」を2回も成就され大先達の位を得られた行者さんである故人のご葬儀に相 応しい厳粛な儀式が流れ、会葬者達から「こんなお葬式、初めて!」のお声もあった。

※ 因みに、奥掛けとは地域によって異なるが、奈良県の吉野から世界遺産に登録された大峰山から熊野古道にある新宮、熊野までの大変な行程だ。

  ご出棺後、ふと微熱があるような感じで身体にだるさを覚えた私、<これはまずい>とすぐに食堂で熱い蕎麦を食べ、自宅に戻って夕方に真向かいの医院へと考 え、やぐら炬燵で身体を休めていたのだが、時間の経過と共に体温が上昇し、午後7時頃には38度近く、これは大変だと医院へ行こうとしたら、何とこの日の 夜間は地域医療の関係で休診となっており「よりよって」で諦めた。

 そんな身体に寒気を感じ始めたのは午後10時頃だった。すぐに布団に入って電気絨毯の温度を強のしたが、身体が震えて止まらず、ついには歯までガタガタするような状況にまで進んでしまった。

 体温を計測すると39度を少しだけオーバーしている。就寝前に服用する薬を飲み、布団を被って身体を丸めて悪猫を「湯たんぽ」代わりに抱く。

 いつしか眠れたようで朝を迎えたが、目覚め前に見た夢が最悪だった。隣国の困った将軍様の死を伝えるテレビニュースに驚いたところで気がついたからだ。

 体温測定結果は38度、とにかく医師の診断を優先すべき。そこで妻に医院の控え室におられる患者さん達の人数確認に行ってもらったら、1時間ぐらいは無理とのこと。どうやら前日の休診の影響が出ているようだ。

  大袈裟だが、行って、待とう!と決断に至ったのは体温が37度ぐらいになった午前111時半頃。3人の患者さんが待ちあい室におられたが、最も高齢のお爺 ちゃんが私に向かって「こんにちは」と仰る。腕を組んで目を瞑っていた私だが、目を開けてお顔を見ると何度か弊社に事前相談に来られたお方。それも国旗、 海軍旗などと共に護国神社の資料
をいっぱいご持参される不思議な御仁。スタッフ達の間では「右翼」のご関係、なんて会話が交わされたこともあったそうだが、それはどうやら辛くて厳しい戦争体験が背景にあり、亡くなった戦友達のために参詣している行動があるように思っている。

 やがて名前が呼ばれて診察室へ。問診のやりとりから先生が下された結果は「風邪みたいだが風邪でないよう。インフルエンザでもないみたいだけで一応チェックをしておきましょう」

 そこからベッドに移り、点滴ということになったが、その前に看護師さんである奥様が来られ「インフルエンザのチェックね」と、長い綿棒を両方の鼻の中に入れられて苦しい思いが。

「どっちの腕にする? あなたは血管が細くて出難いので看護師に嫌われるタイプ。入院の時も言われたでしょう」なんて交わしたのは随分と昔の話だが、取り敢えず「左」ということで進められた。

 チクッとして点滴が始まった。それにしてもいつもの点滴とは色も違うし量も3倍ぐらい多い。それで一滴が落ちるスピードが格段に遅い。これまでの体験からすると、このままでは2時間程度は要するだろう。なんて思っているところへ「やはり駄目ね!」と奥様が。

「血管が細いから針のもしタイプを選択したの。そうしたら、これ。太い針に変更するわ」と別の針を持って来られたのだが、それが入るような血管が出てこない。そこで「右腕にしましょう!」と変更になった。

 チクッという注射針特有の痛みを3回も体験させられてしまったが、その甲斐あって液が落ちるスピードが5倍ぐらいになった。これなら1時間以内に終えるだろうと思っていると、奥様が「副作用についてお話しするわね」と仰って次のような説明があった。

「こ れね、15分ぐらいするとびっくりするほど咽喉をはじめ口腔内が渇いてくるの。でも心配はないからね。それからね、お家に戻られてから新聞などを読むと小 さな文字が見辛くなることもあってね、驚かれた患者さんが眼科に行かれたという出来事もあるんだけど、れも一過性のもので全く心配ないので安心してくださ い。それでは、ごゆっくりとおやすみを」

 最近に多いクレーマー問題、また、モンスター・ペアレンツのことも過ぎってくる。私がそんな「クレーマー・クランケ」だったらどうだろう。前日に休診でなかったらこんなにひどくなっていなかったかもしれない。どうしてくれる!なんてクレームを言うだろうか。

  私は、その正反対の性格。本社近くにある病院で受けたCT撮影時に、造影剤のすべてが洩れてしまって左腕が2倍に腫れ上がった時にも全く怒らなかった出来 事をこの「独り言」に書いたこともあるが、人はミスを犯すものと理解し、それを糾弾したり叱責する時にその人の本質が出ると考えたいものである。

 前号の結びに人の善悪について触れたが、誰もが内面に持っている「悪」と「善」の人格、前者を強く出せば犯罪者や悪人と呼ばれるだろうし、後者であれば、死後に「ええ人やったなあ」となるだろう。出来たら、私は単純に後者でいたいだけである。

  そんな調子で金曜日は自宅静養だったが、午後になって女性司会者から電話。ある会社の会長様の偲ぶ会のシナリオが完成したのでチェックをということだっ た。そこで「部屋を温めておいて」と頼んでから出掛け、彼女が運んできてくれたお客様用の膝掛けを数枚巻きながらチェックを行った。

 今 日の結びになるが、「何の病気?」と疑問を抱かれることも考えられるので正直に申し上げるが、診察結果は「軽度の腸炎」ということ。点滴を受けた日の夜、 銭湯へ行ったら先生とばったり。「お陰さまで、熱が下がりました」と申し上げたら、「無茶をしないように」と仰られた。
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