2012-11-25

函館にて  NO 3110


 駒ケ岳を回った列車が大沼公園を過ぎ、左手に五稜郭が見えると終着の函館駅だが、不思議なご仏縁のある人物の存在があり、今回の旅ではホテルや夕食の場所もお願いしていた。

 改札口の見える通路をしばらく歩くと、「和服姿の方がおられる。あの方では」と妻の声。目が不自由な私にはまだはっきりと分からず、ご本人だと確認出来たのは改札を通ってからだった。

 随分と久し振りの再会だが、妻が言ったように和服姿でお迎えくださり、その清楚なお姿に感謝しながら「ご迷惑を」と頭を下げた。

 駅舎の外に出ると、すぐにタクシーの運転手さんが荷物を運んでくださり、後部座席に乗車。そのまま宿泊する場所へチェックインに向かった。

「竹葉新葉亭」という純日本的な旅館だが、オープンされた頃に九州の友人と宿泊したことがあり、その時は名の知れた料理人の推薦と紹介でお世話になっていたので懐かしかった。

タクシーは個人タクシー協会の会長さんで、彼女のご親戚だと紹介されたが、フロントの前まで荷物を運んでくださると「午後5時に迎えに来ます」と彼女を乗せて帰られた。

  新館が増築されており、すっかり昔と変わったイメージだが、4階の部屋に入って驚いたのが床の間に飾られた見事な水引細工。それは「鳳凰」をデザインされ たものだが、この旅館の娘さんと交流があると聞いていたので<こんなことまで>と恐縮していたら、空である筈の冷蔵庫にお茶、水、ビールなどが入ってお り、これも彼女の配慮と知って驚嘆した。

 大阪を出る前に調べた週間天気予報では、千歳着の日が雨、次の日が雪となっていたので厳しい寒さを覚悟してきたが、雨も雪も降らなかったので何より恵まれていたようだ。

  午後5時になる少し前にフロントに行くと、もうタクシーが待ってくださっており、食事までの時間に「夜景を」と函館山のロープウェイ乗り場へ案内いただい たのだが、中国や台湾の団体客がいっぱいで、間違いなく20分ぐらいは待たされるだろうなと覚悟をしていたら、運転手さんのご配慮で障害者扱いで優先的に エレベーターのところまで係員が案内してくれ、待ち時間もなくロープウェイに乗ることが出来た。

 この見学の間、「タクシーメーターを止めていますからごゆっくりと」との言葉が嬉しく、そのお人柄に手を合わせた出会いでもあった。

 函館山から目にする夜景は素晴らしく、強風で体感温度が厳しい状態だったが、こんな日の方が夜景が美しいと案内があった。

 山を降りてタクシーに戻り、歴史的な幾つかの教会を案内されたが、その解説と薀蓄はさすがに会長さんらしい世界で、じっと目を瞑っていてもその時代の光景が思い浮かぶ程だった。

 午後6時半、食事の場所へ到着。そこには彼女のお母様も来られており、しばらくするとご親戚の女性の方もご一緒することになったが、金曜日だけに出て来る「豆腐」など、この店の女将さん手作りのお惣菜が中々のもので、カウンター席がいっぱいになっていた。

 我々がいたのは座敷だが、冷えないようにコンパクトな暖房ファンまで用意されてあり、そこでお母様が詠まれた短歌の小冊子を拝見、その見事な描写内容に感嘆した。

 秋から冬に向かう時期に飲む日本酒は特に味わい深いものだが、いつも一合なのに、この日は珍しく2合も飲んでしまったのでふらふら。ご機嫌な状態で呼んで貰ったタクシーで旅館へ戻った。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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