2003-03-29

それは、言い過ぎ。    NO 386

葬儀の始まる前、お寺様の控え室にご挨拶に伺うと、肝心の導師さんがまだ到着されておられない。

 遠方からお車で来られるという導師さんは、ご遺族と深いつながりがあり、喪主さんも心配そうに外ばかり眺めておられる。

 時計を見ると開式の4分前。そんな時、お寺さんのお車が到着された。

 装束をつけられるだけでも時間が流れる。慌てて来られた動揺もあられる筈。何とか落ち着いていただくことから始めようと、担当責任者に10分遅れで始めるという命を出した。

 この10分間は、私の世界。言葉と音楽だけでつなぐことになったが、5時間連続でもやれるノウハウは持っている。

 そんなことを知っているスタッフは、誰も落ち着いたもの。考えてみれば私が来ていたからそうなる訳で、少し腹が立った。

 さて、この数日、今までにはなかった電話が入ってきている。それは、来月に行われる社葬の通知ファクッスが発信された頃から始まった。

 それには「偲ぶ会」や「お別れ会」という明記はなく、ホテルを会場とする「式」とされてあり、供花ご辞退にもかかわらず「何とか供花を」と要望されてくるのである。

 これは、きっと故人のご人望からだろうが、「どうにもならないのですね」と残念そうに返されるお言葉に申し訳なく思っている。

しかし、ご辞退されなかったら絶対に式場に入らない数の供花となるだろうし、この手配、整理、領収書の準備、順位の確定など、お客様だけではなく弊社も大変な作業を強いられることになった筈。

 過去に数百という供花を受けられたホテル社葬を担当したことがあったが、その時の前夜を思い出したスタッフが「ご辞退で助かりましたね」と言うと、隣に座っていたスタッフが「でも、売り上げがダウン」と呟いてシラケルことになり、この話題から離れることになった。

 弊社が加盟する日本トータライフ協会のメンバー数社が、見学を兼ねて手伝ってくれるというが、北海道からの「行きます」という電話に、スタッフ達が喜んでいた。

一方で、どこから耳にされたのか分からないが、あちこちののホテルやメンバーでない他府県の数社の葬儀社さんからの見学要望も入っている。

 その目的は弊社のオリジナル進行にあるが、そんな電話を担当していたスタッフが次のように応えていたそうで驚いた。

 「真似をされても結構ですよ。その中には知的所有権が弊社に帰属するものも多くありますが、これまで体感されたホテルさんや業者さんすべてが、『これは、絶対に真似が出来ません』とおっしゃってくださいます」

 それは、言い過ぎ。私の背中に重いものが乗ってきたように思いながら、来月になったらシナリオを創作しようと考えているが、時計を見るともうすぐ午後11時。明後日に私が担当しなければならない2件の葬儀のナレーションを創作することにしよう。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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