2003-04-01

微速前進   NO 388

昨日、私は2件の葬儀の司会を担当してきた。先の葬儀の式場は、由緒あるお寺様。ご本堂は2階となっているが、葬儀は1階の式場を拝借させていただいた。
 
喪主をつとめられたのは奥様。元、NHKのアナウンサーをされておられたそうで、ナレーションの原稿を確認したいとご要望され、担当責任者がプリントアウトしたものを持って飛び出して行った。
 
葬儀の始まる少し前、2階本堂の畳の間で、ご長男を伴われてお寺様にご挨拶に参上し、私が担当した儀式調の挨拶の後、ご用意されたお布施をお出しになった。
 
この時の仕種は、まさに日本の典型的な女性の、礼節あふれる作法の美しさを久し振りに見せていただくことになり、お受け取りになられたご導師も、故人のご終焉の儀式を「司どられる」という重みのあるご対応をされ、厳粛な儀式空間のような雰囲気を感じた。

 ナレーション原稿の変更は1箇所だけ、「から」が「経て」ということだけであった。

 やがて葬儀が終わり奥様の謝辞。この内容が素晴らしく、結びの部分で次のようなお言葉があり、エスコート係りを担当していた女性スタッフ2人が感涙していた。

 前の公園に桜が咲いています。それらは来年、再来年と毎年、花を咲かせるでしょうが、この桜の季節が訪れた時、彼(ご主人)のことを思い出していただければ幸いです。

 次の葬儀の式場に行く。そこは公園の中に建てられた式場で、ここにも桜の花があり、もうすぐ満開という状態にあった。

 故人は、3年前にご主人を亡くされ、同じ式場で葬儀が営まれたが、同じ3月に葬送の儀が執り行われることになった偶然に、ご夫婦の深い絆を感じた思いを抱いた。

 昨日は、月末。それぞれの担当式場から社員が帰社したのは、午後8時を回っていた。そこから軽い食事を済ませ、すぐに会議が始まった。

 全員が疲れのピーク。中には目が充血している気の毒なスタッフもいたが、与えられた責務を理解するために熱い議論を交わしていた。

 弊社の担当する葬儀は、大半が手造り的な仕事であり、大規模葬儀社さんや互助会さんのマニュアル的サービス提供とは異色な世界。それだけに物理的事情で、葬儀のご依頼を頂戴してもお断わりをする場合も少なくない。

 しかし、そんなお客様の中には、「一生に1回だけのこと。だから2日ぐらいだったら待ちますから」とおっしゃってくださったことも何度かあった。

「申し訳ありません」と、その度に社員の増員を考えるが、弊社に帰属する知的財産のグレードは高く、様々な特殊技術は3年や5年で収得不可能なところも泣きどころ。
 でも、ゆっくりながら進んでいることは確かである。

 時計を見ると午前2時前。今日はスケジュールに追われ、この「独り言」の発信が遅れて日付が変わってしまったが、なにとぞお許しをくださいますよう。

 さあ、これから無宗教形式による社葬のシナリオ創作を始めよう。
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