2004-11-12

上品で鮮やか?  NO 972


 深夜、大雨が降っていた。午前1時頃から雷の音も。私が担当しなければならない午前中の葬儀のことが心配だった。

 そんな深夜、スタッフ達が仕事で走り回っていたが<風邪をひくなよ>と祈りながら原稿を打ち込んでいた。

 さて、今日の葬儀だが、ご出棺前にハプニングが発生。式場と下駄箱がある入り口とに随分距離のある会館。これからご出棺というところで喪主様の靴が行方不明。

 「お履き物のご確認を」とアナウンスを入れ、しばらくすると誤って履かれた人物が発見され、さあ、ご出棺。お柩が霊柩車に安置された。

 すべての音響機材のスイッチを切って表に出ようとした私、何と私の靴が消えている?

 これでは火葬場に行くことが出来ず、まさかスリッパという訳にもいかず<誰かスタッフに代行を?>と考えたのだが、やはり私が担当するべき。

 仕方なく再放送を進めたが、自分の履物を探すのは情けないものである。

 「ありました。発見です」と、スタッフが苦笑の表情で持ってきてくれてホッとしたが、振り返ってみれば、通夜や葬儀で自分の靴をなくしたことは50回ぐらいあるだろう。

 畳敷き本堂のあるお寺、また下駄箱設置形式の式場とは大変だ。行方不明で新しく購入することになった過去の履物代、果たして必要経費として認められるのだろうか?

 今日は、正直言って体調が芳しくなく、かなり変な声で司会を担当していたが、火葬場に向かう車の中、「いい声ですね?」「母も喜んでいます。有り難う」とおっしゃっていただき、無性に残念な思い。<いつもの声なら>と、自身に腹立たしい思いを抱く時間だった。

 毎日ハードスケジュールに追われている。スタッフも必死なら私も頑張らなければ。今晩のお通夜も明日の葬儀も、やはり私が担当しなければと考え「お通夜の状況は?」と確認すると、「お花がお好きな故人でした。お花に包まれたご祭壇をご要望されました」との報告が。
 
 「それで?」と再度訊ねてみると、「入れ過ぎるとおっしゃるぐらいお包みしました」と涼しい顔。

 こうなれば、次にカラーリングの質問だが、「白を基調にしてあります。洋風のお花を厳選し、それはそれは鮮やかな色彩で上品ですよ」

 <どういう意味?>と不明だったが、そう答えた担当スタッフの表情が自信に満ちている。<式場に行ってから>と思い直し、お通夜の始まる直前に式場に行った。

 確かに白が基調で鮮やかな雰囲気。特別バージョンのご遺影イメージにマッチしている。横にいた女性スタッフの顔を見ると、「そうでしょう?」というかわいい笑みがあった。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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