2004-02-01

看取られる権利   NO 687

日本トータライフ協会のコラム「有為転変」に、核家族化が進み、臨終を看取ったのが伴侶だけだったというケースが増えていると書かれてあった。

 一方で、高齢社会を背景に必然として独居老人が増え、気の毒な「孤独死」いうことも多くなっている。

 誰にも看取られることなく人生の幕を閉じ逝く。こんな寂しくて悲しいことが全国で毎日起きているが、人生にあって臨終を誰かに看取られる権利だけは行使いただきたいと願っている。

 「亡くなりました。葬儀をお願いしたいのですが」

 そんなお電話を頂戴するが、そこで伝わってくるパニック状況も様々で、我々は110番や119番の電話口対応のように、落ち着かせながら的確な情報入手を進めていくのである。

 「今、どちらにおられるのでしょうか?」

 それは、故人が存在されている場所の確認だが、自宅、病院というのが一般的。しかし、事故や事件絡みとなると「警察です」ということもある。

 医師が死亡診断書を発行出来ないケースとしては様々あるが、病死や自然死であっても日常に診察事実がなければ医師法に則って警察に報告する義務があり、こんな場合は検死という手続きが進められ、死因調査として解剖が行われることもある。

 さて「明日、警察に行かなければなりません」と弊社のスタッフから電話があったが、<交通違反でも?>と思ったらそうではなく、孤独死をされた方の搬送があると言う。

 いつも極めて多忙な検死官の職務、そのスケジュールは明日になれなければ分からないが、<解剖にならなければいいのに>と願っている。

 年末だっただろうか、ベテラン社員と共に警察へ行った女性スタッフ。刑事さんが彼女を見て不思議そうに「君も葬儀屋さん?」と言われたそう。

 その時の故人は、女性の方。残念だが「女性の場合は、女性スタッフが随行するのです」とは返さなかった彼女。しかし、若い刑事さんが納棺業務を手伝ってくれたそうで喜んでいた。

 我々の仕事に大きな変化の波。女性は接待しか担当しなかった男性社会の葬祭業だが、今や飾り付けは普通の業務になりつつある。

 弊社が最も重視しているのは「ホスピタリティ」という女性特有の感性。悲しみの遺族をフォローしながら故人の人生を拝聴する。そこで的確に得られた情報を「人生表現」としてシナリオ化する。それらは祭壇のデザインやカラーリングにも重要なこと。

 私の創作するナレーションも、そんな彼女達の情報が何より大切。「思い出を形見に」という企業理念、それは、今、着々と全スタッフに浸透しつつあるようだ。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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