2004-03-08

プロは小心者?   NO 724

事務所に寄ると、机の上に開かれた封書が置かれてある。それは、如何にも「見てください」と言わんばかり。そこで中身を取り出してみた。

 入っていたのは弊社が担当させていただいたお客様からのアンケートのご返信。すべての項目で「非常に良い」にチェックを頂戴していた。

 そして、今後のためにお気付きの点は?というコーナーに、次のお言葉を喪主様のサイン入りでお書きくださっていた。

 『特に祭壇のデザインにびっくり!! よろこんでいます。 皆さんから立派だとよろこんでもらえました。是非、次の機会には紹介したいと思っております。この度 有り難うございました』

  最近、こんなお手紙を頂戴することが多くなり喜ばしいところだが、「邁進」は結構だが「慢心」をするなというのが私の口癖。喜んでいただいて当たり前が葬 祭業の仕事。一生に一回限りの葬儀に携わり、そこで怒りという二重の悲しみなんて発生したら<葬儀を担当しなければよかった>と後悔することになるだろ う。

 このお言葉に感じなければならないのは「よろこび」が平仮名表現されていること。「喜」という文字を避けられたご遺族のご心情が伝わってくる。

 ミスによる疲れは身体に最悪。スタッフが私の健康を真剣に考えてくれるなら「ミスを絶対に発生させるな」と頼み、毎日のように言い聞かせている。

  今日は月曜日、お客様の訃報通知が始まったと同時に電話が次々に鳴り響く。その大半がご供花の受注。文字の間違いのないようにファクシミリをご利用くださ るようにお願いしているが、中には出先で携帯電話というケースも少なくなく、互いの思い込みに生まれるミスに恐怖感が募る。

 「社長は、完全主義より気が小さいのでは?」

 そんな風評が社内に流れているようだが、ミスの発生に対するカミナリだけは強烈なので覚悟をしてもらいたく、万全の心構えあってこそ「案ずるより生むが易し」の格言に至るもの。

 さて、故人の生い立ちナレーションを創作しているが、取材表に様々なことが書かれてある。「これ、すべてをお願いします」とスタッフからの添え書きがあるが、見ただけで10数分を要してしまう。

 何を割愛するべきか、何を強調するべきか、それは御通夜を担当した際の雰囲気で決定することにし、少し離れた大式場に出掛ける。

 ご遺族へ挨拶に伺うと、担当責任者に対する感謝のお言葉。そこでホッとしたが、すべてが終わるまで気は許せない。音響、ビデオなどの最終チェックを始めたが、ご導師のお説教を予測してマイクの延長コードを指示し、「?」と「IF」の欠落を指摘する。

 お寺様に前もって「お説教は?」と確認申し上げるが、「その時の雰囲気で」というケースも少なくない。しかし、私が司会を担当するとお説教をされるパーセンテージがアップするようで、その要因が式場空間の「静寂さ」にあると自負している。

 明日は友引の日で、ゆったりとした時間配分を考慮した。参列者全員が着席可能な静かな式場。そこで見事に生き抜かれた偉大な女性の葬送を担当するが、ナレーションは男性と女性ナレーターの掛け合いバージョン。今、そのシナリオが完成した。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
携帯で下のQRコードをスキャンするか
 または
携帯に下のURLを直接入力します。
URL http://m.hitorigoto.net