2006-04-05

活かせれば  NO 1467


 自宅で静養していると次から次にインターホンが鳴る。そのすべてがお見舞いで恐縮、多くのお客様の出入りに猫達が興奮気味に走り回っていた。

 今日は、自宅前の銭湯が定休日。そこで200メートルほど離れた「源ヶ橋温泉」へ。

「通」の世界では誰もが知る有名な銭湯、床板から天井まで材質を見るだけで重要文化財という建築物、庭の桜が満開だった。

 テレビや雑誌の取材も多く、必ず採り上げられるのが屋根にある「自由の女神」像。はるか昔にニューヨークと洒落たユニーク発想をされたご主人の葬儀を担当したが、帰り際に奥様から「しんどそうね?どうしたの?」と質問が。

 やはり病人らしい動きで感じられたのだろうが、経緯について説明申し上げたら驚かれ「こんなに早く退院して大丈夫なの?」と心配いただいた。

 宝石風呂と呼ばれる温めの湯に入り黙想したら、手術後の「地獄の時間」と書いた集中治療室のことが思い浮かんできた。

 このフロアには家族が待機する部屋もあるが、何時間もの手術を心配しながら過ごす家族にも地獄のような時間だろうし、特に救急車で運ばれて来た場合には強烈な世界と想像する。

 大切な家族が突然倒れ、救急治療を受ける。その大半が病名すら不明でおろおろされるばかり。そこでの救命率となれば恐ろしい数字が出る筈。私のように前以って徹底した検査を済ませて手術に臨むケースとは雲泥の差があるだろう。

 ご家族からの葬儀依頼電話で「今、どちらに?」と伺うと「**病院の集中治療室です」ということも少なくないが、そこには患者から故人となられたご本人も壮絶な命のドラマがあっただろうし、その成功を心から祈っておられた家族のドラマも秘められている。

 家族が「遺族」になった瞬間から担当が始まる我々の仕事、今回の入院は、そんな人間ドラマのシナリオの中で、自身で配役体験が出来たような思いもある。

  そこで思い出したのがチーフ・パーサーが入社してからすぐの会議だった。看護師である彼女の意見が、かなり好戦的な感じだったから。それらは徐々にスタッ フ達に受け入れられてきた歴史もあるが、彼女が伝えたかったことのひとつが上述のような家族の思い。その理解なくしてスタッフが病院にお迎えに行くべきで はないということだった。

 そんなことから弊社のスタッフ達は他社にない「やさしさ」を有すると自負していたが、今回の体験からもっとそのハートが強くて本物になるような気がする。そして、また「体感に勝るものなし」を学んだ貴重な入院でもあった。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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