2002-11-30

今日のコンサートは?   NO 269

ホテルや葬祭式場での葬儀で履物を脱ぐ必要はないが、お寺や地域の会館では畳やカーペットのこともあり、履物への対応が大変なことである。

 「私の靴がない」

 そんなお言葉を何度耳にしただろうか。その度にスタッフ達が走り回り、司会者が「恐れ入りますが」とのアナウンスを行わなければならない。

 高齢者の中には、ご自分の履物を覚えておられない方も少なくない。
「みんな帰ったら1足残る筈。それがおそらく私の靴だ」
 お通夜でそう言われ、午後11時まで式場におられた方もあった。

 弊社では、スタッフ会議の中から考案した「下足札」を用意しているが、活用くださる人は少なく、それからも何度も履き間違い事件が発生していた。

 ある女性の方の無宗教葬儀が行われ、通夜に代わる前夜式の時、一人の方の靴が行方不明となった。

 残った他人の靴を履きたくないのは誰も同じ。その方は、スリッパを履かれ、タクシーで1時間も掛けられてお帰りになった。

 弊社が責任を取るのは当たり前。タクシー料金は頑なに固辞されたが、靴だけでも弊社でということで解決することになった。

 次の日に電話で謝罪を申し上げ、ご自身でお選びなられた靴の領収証を郵送いただくこととなり、数日後、送られてきた金額を振り込むと共にお詫びの一筆をしたためて郵送した。

 この葬儀の故人は、芸術大学にお店を出され、様々な分野の芸術家の皆様が参列されておられた。

 さて、数日後、今回の被害者のお方からお手紙が郵送されてきた。中にはコンサートのチケットが2枚同封され、美しい案内パンフを開けると、そこにはご本人の大きなお写真が掲載されていた。

 なんと、そのお方は著名なピアニスト。音楽活動30周年記念としてシンフォニーホールで「ピアノ協奏曲の夕べ」を開催されるそうで、音楽好きな女性スタッフ2名がご好意に甘えることになった。

歌 劇「後宮からの逃走」序曲・モーツアルトのピアノ協奏曲23番イ短調 作品488・プーランクの2台のピアノと管弦楽のための協奏曲・ガーシュインのラプ ソディーインブルーのプログラム。私も行きたいと心から思っていたが、今回は、式場で対応してくれたスタッフに譲ることにした。

 奏者が全霊を込めて演奏される時、ピアノがドレスアップしたように光り輝き、幸せそうな表情を見せてくれるもの。そんな優雅な時間を過ごすことの出来る2人のスタッフを羨む日となった。

 先生、素晴らしい演奏空間を想像いたしております。その節には、大変ご迷惑をお掛けいたしました。伏してお詫び申し上げます。
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