2006-05-16

早朝談議?  NO 1506  


 午前1時40分過ぎ、扉の外のシャッターがカタカタと鳴っている。<!?>と思って見たら蛍光灯のスイッチの重りが揺れており<地震!>と気付いたら、同時に妻と猫達が2階から降りて来た。

「地震よね?」と心配そうな表情。今のは震度2程度と答えたが、ヤンチャ猫も落ち着かない様子。それにしても地震の揺れとは不気味なものである。

 朝から運動を目的に歩き、遠方の喫茶店に立ち寄ると顔見知りの70代のご夫妻と会った。

「大丈夫?」が掛けられた第一声、作務衣姿の私の姿に他の客の視線が集まる。

続いて「退院、おめでとう。術後も順調らしいね」とママさんから。それは、店内に居た知らない客達に生じる興味本位な詮索をストップさせてくれる配慮、そんな人柄に人気が集まるママさんだ。

 カウンターに座ろうと思ったら、ご夫妻のテーブルを勧められた。そう広くない店内、他人の交わす普通の会話なら全てが聞こえる。天井や壁の材質からそうなるのだが、マスターの趣味から音響機器が中々のもので気に入っている。

 ご夫妻の表情が明るく、何か楽しそうな雰囲気が感じられる。その秘密はすぐに解かれることになった。3ヶ月ほど前から「写経」を始められたそう。そのきっかけとなったのは「美しい文字」を書きたいということからだった。

「不 純な欲望から始めたのですが、今は違いますよ。心から始めてよかったと思っています」と、お2人のニコニコ顔。横からママさんが「姿勢がよくなったのよ ね。心が洗われるのよね。血圧も下がったのよね」と言葉を挟み、どうやら、ご夫妻が多くの人達に「写経」を勧めているようだと推察できた。

  この喫茶店の常連客に書道の先生がいる。「どうしたら文字が綺麗に書けるの?」という質問に返されるのが「正しく丁寧に書くこと。筆順を誤らず、上下、左 右のバランスを考えて」ということ。「それには写経が最高だ」ということから常連客に流行した経緯があるが、このご夫妻が始めていたとは驚き。なぜなら、 お2人は誰もが知る敬虔なクリスチャン。写経を続けられるとは不思議でならなかったからだ。

 そんな私の<!?>を察しられたかのように、奥様がこれまでの経緯について教えてくださった。

「私達はクリスチャンだけど、主人の家は仏教でお仏壇もあるの。毎月お寺様にも来ていただいているのよ。驚いたでしょう?」

 家の宗教と自分の信仰が異なるというケースもあろうが、過去に喪主さんがクリスチャンで仏式で行われた親の葬儀に焼香を拒否したことが何度かあり、腹立たしい体験をした思いを話し「宗教って、グローバル。そうあるべきですね?」と申し上げた。

  そんな中途半端な信仰があるかと反論される方もあるだろうが、宗教というもので揉めたり争いをすることほど愚かなことはなく、神父と牧師の区別があっても 差別は愚の骨頂、神仏は互いに尊く、そこに手を合わす姿こそ人間の心の美であるというような会話が続き、朝からこんな宗教談議になるとは予想もしなかった こと、しかし、そのまま整骨院に向かう道すがらに何か清々しい思いを感じていた。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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