2003-03-03

忘れられないご夫婦  前編   NO 361

今日は、桃の節句。去年の今日、あるホテルで偲ぶ会が行われていた。

 子供のいないご夫婦。小学校の先生をなさっておられた奥様を亡くされ、ご主人の寂しさは計り知れないものがあられたようで、教え子さん達が企画された偲ぶ会が大成功という結果を迎え、担当した私もほっとしたことをはっきりと覚えている。

 そのご主人も昨年の秋にこの世を去られ、9月12日に静かな葬儀が行われ、過去ログの「NO 195 ノスタルジー」と「NO 196 挽歌」でこの「独り言」にしたためた。

 いかにも頑固そうなオヤジさんだったご主人。奥様の密葬儀と偲ぶ会でお話をしたが、私は、その時、<なんで奥さんが先に逝かれてしまったのだ>という強い思いを抱いた。

 <こんなタイプのお父さんを独りにしてしまったら寂しすぎる。男って弱いもの。絶対に長生き出来ないのに>

 そんな思いが的中したようで、奥様のご逝去から7ヵ月後の命終となってしまわれた。

 奥様の偲ぶ会の時、私はご主人にお願いしていたことがあった。それは、「奥様に対する思い」で、挨拶や謝辞とは異なる文章でと切望していた。

 やがて、スタッフが預かってくることになったご主人の文章、そこには如何にもこの人らしい思いが綴られており、私の上述の危惧を一層募らせることになったが、その内容は素晴らしいものであり、偲ぶ会の当日、私は精魂込めて朗読を担当した。

 このご夫婦は、もう、この世におられない。命を伝達される子供の存在もなく、世の中子供のない夫婦のことを考えると、私という身勝手な男の考え方で恐縮だが、伴侶に先立たれた夫ほど惨めなものはないだろう。

全国に独りで暮らしておられるお父さんのことを思い、今日から連載で、このオヤジさんが綴られた奥様への思いをしたため、えにしに結ばれた大切な「夫婦の愛」というものをお感じいただけたらと思っている。

  プライベートな部分については割愛をさせていただきますが、私が共感を覚えたこのお父さんだけではなく、多くの教え子達から拝聴したこのご夫婦の愛情物語 にも感動し、教育者とされて偉大なご功績を残された奥様のことも思い偲びながら、僭越ですが「語り部」の立場でしたためることにいたします。

ある女の一生 「彼女の生き様」
 金融恐慌、取り付け騒ぎ、銀行倒産。軍部が独走をはじめ、15年間の戦争へまっしぐら。世情、物情が騒然とした混迷の年、それが昭和4年であった。

 彼女は、この年、大阪の地でこの世に生を享けたが、その幼児期は、本当に「ひ弱かった」そうで、小学校2年生の時、重い病気を患い入院。医者から見離されて死線をさまよったそうだが、奇跡的に存命(そんみょう)を得た。

 これが彼女にとって免疫の源になり、それは彼女の再生の人生の始まりだったと言えるかも知れず、それからの成長過程を経て、結婚してからも、これといった病気には縁がなかった。
               明日に続きます
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