2012-09-20

学んだこと  NO 3051


 愛読書の中の「大法輪」は、書店から毎月配達して貰うようになってから30年以上の月日が流れた。葬儀という仕事に従事している立場にあって、こんな役立つ書物はないだろうと思うし、死ぬまで愛読するつもりである。

 そんな最近の号で楽しみな連載がある。「日本人の心のふるさと」というサブタイルで続いている「神と仏の物語」で、執筆されているのは著名な名刹のご住職である。

 境内に樹齢800年以上という楠の大樹があったと記憶しているが、アポの電話を入れてこのお寺に初めて参上したのは随分と昔のこと。それは、絶対に忘れることの出来ない思い出となっている。

 ある大企業の会長さんの社葬本葬儀を担当させていただいた時のこと。他府県で密葬儀を進められて社葬だけというケースだったが、葬儀委員長を務められる社長さんが「君に頼みたいことがある」と、打ち合わせが終わった後で懇願された問題が大変だった。

  あるご仏縁から上述のお寺様が導師を務められることに決まっていたが、戒名について院号居士の授与を願ったところ、「出来ません」と頑なに拒まれたそう で、社葬の際に格好が付かないという体裁的な本音も感じられ、「院号」とはお寺を寄進建立されて初めて受けられるぐらい大変なものと説明したが、「君から 何とか頼んで欲しい。お金のことはとやかく言わないから」と平身低頭されたのだから避けられず、ついに覚悟を決めてアポに至ったプロセスがあった。

 経験したことのない緊張感いっぱいでお寺に参上し、それまでの経緯について説明申し上げたら、ご住職が次のように仰ったことを今でもはっきりと憶えている。

「何千万円包んでいただいても院号居士を贈ることは出来ません。院号とはお金で買えないもので、委員長さんは勘違いをされているようだ。私が頑な固持していたのは、大会社のトップにまで君臨されながら、お亡くなりになるまで信仰の姿勢が見られなかったという事実なのです」

 そのお言葉に返すことは出来なかったが、過去に体験したあるお寺さんの説教を思い出し、僭越ながらと申し上げた。

 それは、故人は不信心で問題だったが、ご遺族と呼ばれることになったご家族が故人の代わりに徳につながる信心と精進をと言うことだったが、ご住職が微笑まれた表情が印象に残っている。

 結果的に立派な「贈り名」を頂戴することに至ったが、それに負荷されたご家族への条件はご尤もなことで、お金の問題を一切仰らなかったことに感銘を抱いた出来事であった。

 結果的に伝書鳩的な私の役目が実ったことになるが、委員長がその経緯をご家族に懇々と説諭されていたことも今では懐かしい思い出である。

  さて、大法輪の「神と仏の物語だが、最近の号やバックナンバーにあったサブタイトルや小見出しには「賀茂社と鴨長明」「鴨(賀茂)一族の信仰」「方丈庵と 方丈記」「住吉大社と住吉明神」「住吉大社とは」「赤染衛門の物語」「住吉大社と神仏習合」「堺の海岸と美しい老松」「浦島太郎の物語」「道成寺 安珍と 清姫」「幸せをもたらす七福神」「梅津長者物語と七福神」「七福神信仰のひろがり」「優しい心は貧乏神を福の神に変える」などがあったが、この「独り言」 をご笑覧くださる方々にはお勧めの書であると申し上げます。

 今日の写真は、大阪市平野区にある融通念仏宗の総本山である「大念仏寺」。開祖は「良忍」上人で「声明(しょうみょう)」の世界でも特別に知られるお方である。紅白の幕が見えるが、慶事の法要が営まれている日に撮影したものである。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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