2003-08-17

音  量     NO 518

昔の夏、風鈴をいっぱいぶら下げ、涼しげな音色を響かせながら「ワラビ餅」を売る屋台があったことを記憶している。

 そんな風情を感じる姿を見ることがなくなったが、最近は軽トラックに変わり、高い音量で音楽を流しながら「わらび~餅」というアンバランスなアナウンスが聞こえて来る。

 そのBGMは、決まって「ポール・モーリア」グランドオーケストラの「シバの女王」。

<買ってみたい>と思っても、止めれば大音響の音楽が自宅前で流れることになり、近所迷惑を考慮すると絶対に買えない。

屋台ラーメンのチャルメラのように、客があって調理中は鳴らさないようにすればいいのにと思ってしまうし、騒音がひどい公害になっていることを知って欲しいもの。

日に焼けたアスファルト道路を歩いていると、「てるてるボウズ、てるボウズ」という歌声が流れてきた。ふと振り返ると、ライトバンの選挙カーらしきもの。次期の国会議員選挙に立候補を予定しているらしいアナウンスで、次のように言っていた。

「大阪の明日の天気を変えることは出来ませんが、日本の天気を変えようと尽力いたします」
 
 <どうして「てるてるボウズ」の歌なんだ?>と思って見ると、候補者の名前に「てる」の文字が入っていた。これらは、おそらく選挙のプロと呼ばれるコーディネーターの発想だろうが、ボリュームの調整までプロデュースしなければ票を減らす危険性があるだろう。

 暑さの中の騒音は、完全な暴力。風鈴の音が懐かしい。

 そんな暑さを逃れるため、アーケードのある生野の商店街に入った。各店舗のエアコンの流れや陰の影響で数度は涼しいが、ここでも「暑苦しい」音楽が流れている。

 <店主や店員さんには、やかましくないのか?> そんな疑問が汗と共に噴出す。

 携帯電話が鳴れば、商店街から退避しなければならないぐらいの音量。音量調整の担当責任者の顔が見たいが、それらに疑問を感じない店主の皆さんもサービス業失格だろう。

 私は、ホテルや文化ホールなどで社葬を担当する時、無理を言って、司会台の横にすべての音響システムを設置していただく。それは、ハプニングへの対応もあるが、微妙な音量調整を手元でしたいが為。

 多くの一流ホテルのミキサー担当者に、「そんなこと喋りながら不可能でしょう?」と、いつも訝られたが、2回目からは何も言わないのにセッティングされている。

 しかし、私が「この仕事は」とパワーを全開する時、私の最も信頼するプロの音響スタッフに託している。

 幾つもの特殊スピーカーの設置。器材間の間隔に応じて音響は微妙に異なるもの。与えられた会場空間を式場空間に「神変」させるには、音楽と言葉と共に音響が極めて重要。

音量こそに、効果が生まれる「技」が秘められているのである
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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