2003-11-17

後ろ姿     NO 608

お通夜の司会を担当したが、この数日冷え込んでおり、持病の腰痛が応えてくる。

 しかし、悲しみを迎えておられるお客様への責務が第一。明日の本番のために、帰宅してから銭湯の電気風呂で温まり、葬儀当日に控えている。

 今日は、午後から大規模なホテル葬もあった。食事のおもてなしを中心とする形式で、会場には多くの屋台がセッティングされた。

 葬送の「かたち」が急速に変化してきている。弊社への事前相談にホテル葬が増えているし、一方で限られた方々だけでの「家族葬」を要望されるケースも多くなった。

 さて、今日のお通夜だが、喪主さんが地域の重職を歴任され、亡くなられたご伴侶も交友関係の広いお方で、驚くほどの弔問者が来られた。

 夏頃にお身体のご不調を訴えられ大手術をされたそうだが、現代医学の最善を尽くしても及ばず、惜しまれる70年間の人生を静かに閉じ逝かれた。

 喪主さんや息子さんから闘病生活を伺ったが、それは、壮絶な病魔との闘い。改めて病気の恐ろしさを知ったような思いを抱いている。

 明日の葬儀は、皆さんに告知された時間よりどうしても15分前から開式しなければならず、そのご了解を願っている時、近所におられる役員さんがやって来られた。

 机の上に置かれた10数枚の思い出写真をご覧になり、「これ、メモリアルボードの写真?」とおっしゃると、「私の家にお母さんの写真がいっぱいある筈」と、ご家族のお一人を伴われてお写真探しに行ってくださった。

 葬儀の依頼を頂戴し参上した際、ご本人のお気に入りの写真がなかなか見つからないもの。ましてや長い看病から悲嘆の世界に陥られると、家内での写真探しは容易ではない。

  祭壇に飾られたご遺影を見られた弔問者が、「もっと、いい写真がなかったのか?」と疑問のお声を出されることも多く、「これだったら、一緒に旅行した時の いい写真があったのに」と嘆かれる光景を何度も体験したが、今日のご遺影はソフトクリームを手にされたもの。そのご表情がいかにも故人らしく評判がよかっ たが、一見、カラオケのマイクを手にされているイメージにも見え、近くまで寄られて確認をされた方もおられた。

 友人や近所の方々のアルバムに、思ってもいなかった素晴らしい写真があることも考慮したいもの。上述の近所の役員さんに大いに感謝するところだが、故人がきっと喜んでおられるものと拝察する。

 何十年の生活、そこには多くの人との出会いと別れがあるが、えにしに結ばれた方々からの「思い出を形見に」というような、そんな心のプレゼントが最高の供養。これらは、義理やビジネスでは生まれない。

 関東弁で「いい人だった」。関西弁で「ええ人やったのに」。そんな言葉で送られたいもの。

 NO 602で書いた「看護師さんの刹那さ」に対する専門家の答え「人は、生きたようにしか看護されない」ではないが、葬送は、その方の生き様を見事に物語ると言えるかも知れない。         ・・・・南無大師遍照金剛
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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