2004-02-26

強風の中で   NO 713

遠方での葬儀を担当、何度かお話したことのあるお方。その人柄を改めて知るあたたかい葬儀だった。

 4人のお孫さんの存在があり、晩年は携帯電話のやりとりがお楽しみだったそう。お母さんに抱かれた幼いお孫さんの涙が印象的。

 早くから二世帯住宅を建築され、ご家族の絆が強く結ばれておられたようで羨ましく、愛されたお爺ちゃんであることは皆さんから託されたメッセージにあふれていた。

 10人ぐらいもあったメッセージ、内容を見て<女性スタッフだ>と決断し、隣接していた公園の片隅でテストする。

 「私、ちょっと困った事情があるのです」

 何と彼女は、現在「口内炎」。途中で噛んだら申し訳ないと言うが、テストしたら合格点。「やれ、決定」で押し通した。

 やがて、本番。緊張している感じがあったがうまいもの。帰社してから「合格」の言葉を贈ってやった。

 さて、今日は夕方から来客が続いた。事前相談もあったが予定外の方から急なアポがあり、隠れ家で時間を過ごす。

 気が付けばお通夜に行かなければならない時間。担当タッフから「社長に関係あるそうですよ」という情報が入ったから。

 珍しくご自宅で行われたその葬儀、故人はお花のお師匠さん。社員が気を遣ってくれたようで、部屋中お花でいっぱい。祭壇前に「師匠」を表す立派な木札が飾られていた。

 「先日、対談でお世話になったそうで」

 喪主様が、そうおっしゃる。「?」と思って首を傾げると、何と先日にホテルヒルトン大阪で対談した際におられたお一人が息子さんだったそう。

 <こんなご仏縁が?>と驚きながら、明日の葬儀の司会を担当することになった。

 昨日まであたたかだった大阪だが、夕方から吹き始めた風が強くなり、設営されている様々なものが吹き飛ばされる。私の最も恐ろしいのが風。

準備していた暖房設備の効果も薄く、「冷え込んでいます。お風邪を召されたらいけません。どうぞ、お手持ちのコートをお召しください」と焼香時に女性スタッフが声を掛ける。

 「助かるわ。寒いものね」

 そんなお言葉でお一人が着られると、後は皆さんが着用される。冬場の葬儀はコートの処遇が大変。広い式場でもクロークが最も忙しく、ここでの渋滞がすべてをぶち壊す危険性もある。

 葬儀の場、そこには静寂な空間づくりが大切で、それが礼節の基本。

 風、それは参列者をざわめかせるだけではなく、私やスタッフの感情までも支配する。明日、風が治まってくれることを祈念する。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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