2003-03-19

空白の時間    NO 377

「ご存命中に、こんなお話しを申し上げるのは恐縮の極みですが」

 ちょっと事務所に寄った時、女性スタッフが電話の相手にそんな言葉を返している。

相手様は、葬儀の事前相談の方。万一の時どのようにするべきかのアドバイスを求められており、会話が進展する中、どうやら葬儀の予算に移っていることが分かった。

 参列される親戚や会葬者の予想人数を伺い、お布施から飲食接待費に関する話も交わされているが、しばらくすると、彼女が「それは、お客様がお決めになられることですよ」と返している。

 その内容は、一般的に判断されている葬儀費用のこと。いわゆる葬儀の総経費の中で葬儀社に直接関係する予算のことであった。

 「お柩とお花1対だけのご葬儀もございますし、30万円も50万円もございます。それらは弊社が提案申し上げることではなく、お客様がご自由にお選びになることなのです」

 そんなことを伝える彼女にもどかしさが感じられる。それは、<こんな相談は、電話ではなく直接面談で伝えたい>ということ。不幸を間近に控えておられるご家族の方に、安心感を与えて差し上げたいとの思い。

 発言を耳にしながら、その思いがしっかりと伝わることを願っていた。 

 こんなお電話を頂戴する大半の方々は、何処かで弊社が担当する葬儀に参列された方。

「**さんのお葬式、幾らのお葬式だったの?」

  そんな現実的なご質問も多いが、これらはプライベートに関することで秘匿するのは当たり前。続いて、「**万円ぐらいだったのでは?」とおっしゃる金額の すべてが実際の金額よりはるかに高額。それだけ評価をしていただいたことは有り難いことだが、そんな誤解というべき勝手な思い込みが頭痛の種。

 しかし、世の中は面白いもの。そんな問い合わせを経て実際に葬儀を担当すると、その誤解が一挙に解決出来る。「電話の話、本当だったのね。業者選びが葬儀のすべてということが理解出来た」と喜んでくださる。

 ご精算の時、「弊社名の『高級』の意味がお解かりいただけたようですね?」と申し上げると、「確かに高級だ」とご納得のお言葉を頂戴する。

 何処にも真似の出来ないオリジナルなサービス。
発想し、時間を費やして具現化されたそれらは、今、少しずつ「かたち」として陽のあたる場所に出てきたようだが、サービスの基本であり最も重要な『人』が揃い育ってきたことが私の一番嬉しいところである。

 ある葬儀の終了時、喪主さんの謝辞。そこで感激したことがあった。常識的なご挨拶の後、「今日の葬儀、オヤジは絶対喜んでくれている筈です。私は真剣に葬儀社を選び、そしてこのように満足のいく葬儀をすることが出来たからです。葬儀屋さんにも心から感謝しています」

 そのご挨拶が終えられた際、フォローすべき私の言葉が出なかった。後方に控えていた私。感極まってしまい、約10秒間の空白の時間が流れてしまったからである。それは、長い時間でもあり短い時間でもあった。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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