2003-04-14

事前相談から   NO 399

事務所に寄ると来客があり、女性スタッフが応対をしている。奥の机で原稿を作っていると会話が自然に聞こえてくる。

 来社された目的は、事前相談。「父の様態が芳しくなく」ということで「?デー」に備えての心構えなどが交わされている。

 ふと、お父さんのお名前が耳に入った。一瞬、「まさか」と思って、失礼ながら話の中に割り込んでしまった。

 「やはり」、私が10年ほど前まで懇意にしていただいた方である。お父さんはゴルフでよくご一緒くださった方。ご自身の人生哲学が素晴らしく、誰もが知る紳士的なゴルファーであった。

 三井の森、奄美大島、神戸ゴルフ倶楽部など、共にラウンドした時のお姿が鮮やかに甦ってくるが、フィージー島がお気に入りで、晩年をフィージー島で過ごされていたと聞いていた。

 娘様を亡くされたご不幸や、お母様のご葬儀を担当させていただいたが、今度は、ご本人のご終焉の儀式を担当することになる。ご存命中にお見舞いに参上したいところだが、私の職業のことを考えると難しく、辛い思いを抱いている。

 10数年前、私がハンディキャップ「9」になった時、シングル記念パーティーの発起人になってくださり、驚くほどの方々がご参集くださったのもこの方のご人望。その時にいただいた立派な記念の盾は、今も私の自宅に飾ってある。

 ある年の年末のことだった。お誘いいただき、お父さんのホームコースへご一緒した。参加賞は鰤が1匹。抽選で自動車が当たるというユニークなコンペでダブルペリアの競技、ハンディキャップに恵まれた私が優勝という結果になった。

 飛び賞などすべての表彰が終わった後、私の名前が呼ばれ、前に出て行った。

 机の上に抽選箱が置かれ、中に参加者数の番号札が入っている。札を一枚選ぶのが優勝者の仕事。その番号の順位の方に自動車が当たるのだ。車は、確かマツダのカペラだったと記憶している。

 ファンファーレがなった。会場が静まり返る。私は、一瞬<自分の札である①を引いてしまったらどうする?>と思った。

 司会者の「どうぞ」の掛け声で手を入れ、すぐに1枚の札を引いた。確か130番台だったと思うが、その方の顔がこわばっておられたのが印象に残っている。

 「何かひとこと」とコメントを求められたその人物。「信じられん。夢見たい」と言われて私と握手をした。

 その帰路、私が運転する車の中でお父さんがおっしゃった。

 「久世さん、実は、私の乗っているカペラ、このコンペで数年前に当たったのですよ」

 お父さん、あなたは模範となる素晴らしいゴルファーでした。この数年、私は年に2回ぐらいしかゴルフに行けませんが、次に行った時、あなたとの思い出をいっぱい浮かべながらラウンドすることにします。思い出を有り難うございました。
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