2003-04-08

モラルの欠如    NO 394

「母、**が亡くなりました。葬儀をお願いしたいので**病院に迎えに来てください」

 そんな悲痛な心情を伝える電話があった。それから10分ぐらいした頃、「檀家さんの**さんから電話がありましたか? 素晴らしいお婆ちゃんだったのでよろしくお願いします」というお寺様からのお電話も頂戴した。

 故人は、生前に何度かお会いしたことのあるお方。お寺様がおっしゃったように素晴らしい生き方をされ、大正生まれの女性らしさを感じる人望ある方だった。

 ご終焉を迎えられる前、病院のベッドで「お寺様によろしくね。葬儀は高級葬儀でね」と託されたそうで、スタッフがいつも以上に神経を遣ったのは言うまでもなかった。

 しかし、そんな背景を全く知らない病院出入りの葬祭業者さんが、とんでもないことをやらかしてくれ、大変なことになってしまった。

 医学の発展に寄与したいという故人の崇高なお考えで「病理解剖」となり、病院にお迎えに参上するまでの3時間ほどの間に、彼らは信じられない行動を始めていたのである。

 1人の営業社員がお寺に足を運び、「是非、当社で葬儀を」としつこいほど売り込みを行い、別働隊の社員は、数人でご自宅に押し掛け「お片付けをします」と勝手に上がり込み、病院にいる家族の誰かが葬儀の依頼をしているかのように振る舞っていた。

  ご自宅におられたご親戚のお1人が、「君達は何処の葬儀社で、誰の依頼でやってきたのですか?」と問い質すと、「病院で伺いまして」と答えたそうだが、 「病院側が依頼をしたのですか? それとも当家の家族の誰かが頼んだのですか?」と確認すると、「失礼しました」と言って帰ってしまったという。

 この業者さんは、今、大阪で問題業者として知れ渡り、お寺さんの間でも有名になっている。今回のお寺様も、ひどいとは聞いていたが、こんなにひどいとはと、驚ろかれておられた。

 葬儀の打ち合わせに参上した責任者が、ご親戚の方から、「あんな業者を取り締まる機関はないのですか?」と相談されたが、経済産業省と消費者センターとだけお返し申し上げ、病院という言葉を出さなかったと言う。

 そんな彼の心情は、お婆ちゃんの崇高な精神が生まれた背景にあるであろう、お世話をくださった医療関係者への配慮があったからだが、病院関係者が知らない世界でとんでもないことが行われている実態だけは知るべきだと思っている。

 これらの問題は大阪だけでのことではない。日本トータライフ協会の掲示板や、仕入れ業者からも多くの事例を耳にし、全国の病院で発生しているようだ。

 葬儀を受注するための悪質な営業活動が激しくなってきているが、悲しみの遺族を二重に悲しませないという最低限度のモラルだけは考えて欲しいと願っている。
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