2004-03-18

巣立ち   NO 735

必要な書類を取りに事務所によると、研修期間を終えた若い男性スタッフが張り切っている。

 彼は、1件のお客様を担当する責任者として、初めての仕事に接していた。

 これまで何十回もベテラン社員のアシスタントをつとめ、ようやく一任されることになったが、何と言っても一年生。「初心の緊張感が大切」と恐怖感を与えておいた。

 秋田県出身の近鉄ファン。大阪ドームでは別人のように張り切っているそうだが、大学を卒業してからの社会人として真価が問われる機会。先輩達がフォローしてくれているあたたかさに甘えることなく、プロの一員として立派にやり遂げると信じている。

 これまでにお通夜の司会を何度か経験させた彼、若葉マークという謙虚な姿勢が自身を育てる。いつもピッカピッカの1年生であることを心すれば大成する筈。期待を抱く若者である。

 さて、隠れ家に入ると女性スタッフが録音中。オリジナルCD「慈曲」の各曲をMDに収録している。

 「慈曲」は、その活用が難しく、ナレーションのBGMではご遺族のお悲しみの度合いによって同じ曲でも使用する部分を変えている。

 イントロを使用する、しない。また、旋律部分に入ってから46秒後からスタートというように、秘められた演出も重要課題で、私の横で何十回もミキサー担当を経験して初めて理解できるものである。

 1曲を秒数ずつ変化させ、数種類に分けて収録している彼女。どうやらそれらを認識しているようで、「ですよね?」という表情でニコッとした。

 彼女は、エレクトーンやシンセサイザーを研鑽している。音楽に関しての知識も豊富だが、やはり「慈曲」作曲者である高橋三鈴さんに大きな影響を受けている。

社葬やホテル葬で何度も高橋さんの演奏を体感し、葬送での音楽による儀式空間への神変効果を学べたことは、まさに「体感に勝るものなし」いう恵まれた境遇にあったと言えるだろう。

  大学卒業から丁度2年が経過したが、多くのお客様に接し、悲嘆へのホスピタリティ・サービスのプロスタッフの仲間入りを果たしたよう。高知、北海道、大 阪、東京で行われた日本トータライフ協会研修会で学べたことが大きいが、そこで知り得た一流のプロ達との交流が何よりの宝。これからも昇華してくれるだろ うと確信している。

 今日、協会メンバーの専用掲示板を覗くと、研修会の開催について書き込まれていた。メンバー達が「何を学びたいか」というところからネット会議が始まるが、業界の最先端サービスを実践している若いメンバー達が、どんな研修会を企画するのか楽しみにしている。

 若いということは素晴らしいこと。羨ましくてならない年代に突入した私。ふと、次の歌を思い出していた。

 『慈しみ育て来たりし庭の花 心あるなら春を迎えよ』
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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