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2002-03-04

そして、誰もいなくなった御本堂

あるお寺様のご本堂で、90歳を過ぎたおばあちゃんのお通夜が行われていた。9時半を少し回った頃、弔問者の方々が全員帰られ、10時頃には親戚の皆さんもご帰宅をされた。
 式場に残っておられるのは数人のご遺族のみ。そんな時、庫裏(くり)におられたご住職からお呼びがあり参上すると、信じられないお言葉を拝聴することになった。
「ご遺族がご挨拶に見えられ、後はよろしくとおっしゃっていました」
「!?」
「全員がご帰宅されるそうですよ」

 詳しいお話では、明日の午前10時にご本堂集合と相談をされておられたそうで、初めて体験するご遺族のいない「夜通し」ということの始まりだった。

 御灯明やお線香のお供え交換、そんなことは「お任せします」とのこと、きっとご住職も唖然とされ、ご返答が出来なかったものと拝察。その後の対応に難渋する問題発生であった。

 10時半ごろ、「では、よろしく」と本当にご遺族全員が帰宅されてしまった。ご本堂に荘厳された立派なご祭壇のご遺影が、淋しげな表情を見せられるように思える。
長時間持つ御灯明に交換し、お線香を何度か立替えるが、帰るに帰れない状況。

そんなとき、ご住職がご本堂にやってこられた。
「12時を回るまで私がお通夜をします。葬儀社さんはお帰りください。火を使っていますから危ないので12時には消し、防犯のために山門や本堂の扉にも鍵を掛けます」
 故人には申し訳ないが、有り難い救いのお言葉だ。
それから30分ぐらいをご一緒してから帰社したが、このようなケースが全国で増えてきているようです。 
お寺様、ありがとうございました。  おばあちゃん、ごめんなさい・・合掌
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