2003-07-19

ホテルのプロジェクトチーム    NO 490

ある大手ホテルからの要望があり、参上した。

 大型ホテルには「支配人」の肩書きを持つ人が20人ぐらいもおられる。その方々の半数ぐらいが揃われ、打ち合わせが始まった。

 副総支配人が、ホテル内で組織されたプロジェクトチーム「葬送サービスの構築」について15分ぐらいお話され、興味深く拝聴していた。

 全国のホテルに於ける社葬、偲ぶ会、お別れ会などの現況調査をされ、宴会やパーティーに来られたお客様から、「このホテルでは、社葬は可能なのか?」と訊ねられることが増えたことが今回に至った背景であった。

 企画支配人という方の発言が気になった。「ポスト ブライダル」の姿勢を感じたからで、それは誤りであると強く否定した。

 「百聞は一見に如かず」というところから、私がこれまでに担当したホテル葬のダイジェストビデオをご覧いただいたが、全員が感嘆され「衝撃」というお言葉で共通された。

 続いて、ホテルの葬送サービスに於ける重要な問題を質問してみた。それは、遺骨や霊位に対するホテル側の考え方。

東京のあるホテルは、「当ホテルでの社葬や偲ぶ会では『遺影』のみとなっており、遺骨はお断わりいたしております」という馬鹿げた内部マニュアルを設定されたところもあるし、「儀式たることは一切行いません」と最低の考え方を表面化しているホテルも存在している。

テーブルに付いているホテルマン達からの発言がない。このサービスの構築にはこの問題のクリアなくしてお客様のご満足はない。そこで、次のビデオを見せることにした。

「皆さんはホテル側ではなく、施主や参列者としてご体感ください」と前置きして流したビデオ。それは、ご霊位の入場式、安置式、そして閉式後に行っている返還式であった。

約10分間のビデオが終わった。落とされていた部屋の明かりが点けられホテルマン達の顔が見える。2人の目に涙が光っている。<感性があるな>と感じた私は、間髪をいれずに、もう一度問い掛けた。

「ご遺影だけで行うべきですか? 儀式は不必要ですか? これらをお客様が、遺影だけという儀式のないホテル葬と比べられたらどのように感じられますか?」

「ご霊位も儀式も必要だと確信しました」

それが全員一致の答え。葬送とは何か、そこに存在する遺族の悲嘆や参列者の心理を教え、ホテル葬のホスピタリティサービスの基本が「故人への礼節」であることを理解させた瞬間であった。

今、今回のような招聘を受けるホテルが多くなってきた。ホテルサービスは本物のサービスを提供するべきと、焦らずという言葉で制し、ホテル内部の意識改革を始めているホテルの将来を楽しみにしている。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
携帯で下のQRコードをスキャンするか
 または
携帯に下のURLを直接入力します。
URL http://m.hitorigoto.net