2002-06-22

マスメディアの誤解    NO 113

少子高齢社会の到来を向かえ、葬儀に関する記事やテレビ番組などが多くなり、タブー視されていた世界がオープン化されてきたとの考えもあるが、誰もがその日を迎えることが確実である以上、他人事ではなく自分のことであり、極めてあたりまえの時代だと思っている。

 マスメディアが取り上げるテーマは、「葬儀の費用」「個性化と多様化」「人生表現」「宗教観の稀薄」が多いが、「費用」に関しては全国紙、NHKでさえ大きな誤りを侵してしまうから恐ろしく、面白いところだ。

 全国の慣習の異なりを理解せず、総経費について東京、大阪から始まり、全国都道府県の平均値を表示されることもあるが、親戚や参列者への接待の風習の異なりは、それだけでも数十万円の差異が生まれる事実を知らなければ、ジャーナリストとしては失格であろう。

 接待関係の他に大きな勘違いがあるのは、総経費の中に「香典返し」を入れてしまっていること。

 香典返しを「費用」と考えるなら、香典の金額を「収入」として表記しなければ貸借対象にならない筈だ。

 すべての分野で、社会アンケート調査とはいい加減なものが多く、一企業単体が「この方向に動かそう」という、意識的な結果を発表することも少なくない。

 ある葬儀社さんが嘆いていたことがあった。50万円の葬儀を受注されてから3ヵ月後、その葬儀が400万円も要したと、近所で風評が流れていたのである。

 噂の発信元は「ご当家様」。どのぐらいの費用が?との問いに、「400万円ぐらい」とお答えしておられたからである。

 では、その「ご当家様」は虚言ということになるのだろうか。決してそうではない。

そこに葬儀費用の複雑な問題が絡み、ややこしい情報伝達となる訳だが、飲食費、御布施、葬儀社関係費用の他に、中陰期間の法要関係費用、仏壇の購入、墓地と墓石となれば400万円となってしまうのである。

また、葬儀社への支払い金額の中に、ご当家の負担でない筈の「供花」まで含んでしまうことも少なくなく、金額が膨らんでしまうことになる。

葬儀は「非日常的」なことであり、未経験な世界での「一人歩き」ということが多く発生し、勝手な思い込みは、時に大きな誤解につながる危険性も孕んでいる。

上述の「50万円と400万円」で、葬儀費用が「400万円」と勘違いされたらどうなるのだろう。内容を理解しない先入観から「当家も400万円で」となれば、法要、仏壇、墓石となると、総計600万円という膨大な費用になってしまうことになる。

マスメディアが葬儀の問題を取り上げられる時、これらの分析をされなければ、読者、視聴者の誤解と混乱を招くだけではなく、我々葬祭業者が悪役としてキャスティングされてしまうことも知って欲しい。

今後、無駄を省く考え方が強くなり、家族葬、自由葬、無宗教形式などが増えるだろうが、人生表現を求められる個性化、多様化対応は絶対に避けられない。

人生それぞれが異なるように、葬儀も異なるべきというオリジナル形式の潮流は、葬祭業界、宗教界への変革要求で、そんなビッグバン的な社会ニーズは、すでに10数年前に始まっており、今、やっと表面化してきた背景を忘れてはならない。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
携帯で下のQRコードをスキャンするか
 または
携帯に下のURLを直接入力します。
URL http://m.hitorigoto.net