2002-06-20

先生、お元気でいらっしゃいますか?  NO 110

今日は、出張中で、この原稿を東京のホテルで書いている。また、深夜の発信となり、日付が変わってしまいました。お許しくださいませ。

今、私の手元に一冊の本がある。昨日ご紹介申し上げた「林 一九〇」先生のご著書、「わが みおつくし」で、昭和50年にご発刊されたものです。
 
林先生の文章には、私が初めて知った言葉も多くあり、万葉集、和歌、川柳、宮中の御歌会始で皇太子殿下が御詠みになられたお歌などについて、先生にしか不可能だろうというような文章表現をされ、私がこれから100年勉強しても表現できないレベルのものです。

 世界的な詩人、作家、哲学者、芸術家、大統領などのお言葉も散りばめられ、それらが見事に解り易く解説されておられる文章表記、一生の中でこんなご本に出会うことが出来たことに感謝を申し上げております。

 数ヶ月前、ある新聞で名横綱「双葉山」が69連勝を阻まれた時の逸話が掲載されていました。

 その当時の新聞、ラジオの世界にあっては大ニュースで、見事な勝利を飾った力士が注目を浴びて部屋へ帰った時、親方が言われた言葉が素晴らしい。

「勝って騒がれる力士よりも、負けて騒がれる力士になれ」という名言である。

 この記事を読んだ時、ふと、林先生の「わが みおつくし」のご本が思い浮かんだ。
突出された高尚な文学と称すべき随筆の中に、私のような庶民の世界に合わせていただく「相撲」に関する逸話があったような思いがしたのです。

「確か」と思いながらページを追って行くと、ありました。2つの逸話が見つかったのです。そこで、今日は、そのひとつを原文のまま引用させていただき、ご紹介申し上げます。
 
< ある相撲取りが、会う人毎に勝った話ばかりするので、「関取! 強いとはかねて聞いていましたが、あなたは負けたことはないのですか」と尋ねると、関取スカサズ「負けた時のことは、勝った相手が話をして呉れていますわい」と、言ったと云うことであります。
 
勝 負の世界にも“勝ちっぱなし”と云うことはないでしょう。況してや人生に“一生土つかず”など、あろう筈がありません。一年三百六十五日でさえ、来る日も 来る日も小春日和のよい天気ばかりは続きません。それが一旦人事となると、“隣の花はいつも美しい”ように見え、人は皆百万円の宝くじを当てているように 思われるものです。

 そうして自分だけが、丁度団体旅行の貸切列車に箱詰めされているように、病気はまるで引請け、貧乏を借切り、思い災難を一身に背負い込んでいるかの如く考え勝ちになるものです。

 青い鳥のメーテルリンクは「幸副を外に求めるのは、知恵を他人の頭脳に求めるよりも無駄なことである。真の幸福は、自分の心の内にある。日がのぼっても目を閉じれば闇夜と違わないし、濡れ衣を身につけていれば、雨天よりも気持ちが悪いものだ」と云っています>

 斎主をおつとめになられる時の先生の「祝詞」、その内容、お声、そして重厚なフィーリングは素晴らしく、入場されるだけでも、会場が完全な儀式空間に神変される威厳が感じられる先生。ご高齢になられた御身が気になってしかたがないこの頃です。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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