2002-07-16

意外な落とし穴    NO 136

最近、葬儀に関する記事やテレビ番組が増えているが、そんな中で「ドキッ」とすることを、葬儀のプロでない人達から教えられることも多い。
 
無宗教形式やホテルを会場とする葬儀に興味を持たれ、取材にやって来られた新聞記者さんとの間で、そんな発見が生まれたやりとりがあったので紹介申し上げる。

 女性スタッフがお茶を出し世間話を進めている時、彼の目が、私の座っているソファーの横に置かれていた雑誌に向けられた。

 目に留まったのは、我々葬祭業界の情報雑誌で、月刊誌と隔月発刊誌。
「ちょっといいですか?」と要望され差し出すと、ページを開け、「葬儀の世界に、こんな雑誌が発刊されていたとは初めて知りました、驚きです」と目を輝かせておられた。

10分ぐらいの時間が流れ、突然、雑誌を手に「変な質問なのですが」との言葉から、予想外の詰問が始まった。
その表情は「興味」という感じではなく、記者特有の追究取材の姿勢を強烈に感じさせるもの。

「これなのですがね?」と言って開かれたページには、ある中小企業の創業者社葬のカラー記事が掲載されていた。

「これは、発行者の取材に基いていませんね。葬儀を担当した葬儀社さんが写真と情報の提供をされている。自社の宣伝ということではありませんか?」 

  彼が言うには、芸能人や著名人が亡くなった場合、多くの報道陣が取材を目的とされて葬儀会場に入られ、新聞、雑誌に記事として掲載されることも少なくない が、この場合でも許可を得る必要があるそうで、単なる担当業者が業界雑誌に情報を流すことは、果たして許されるのだろうか。マナーや肖像権はどのように解 決されているのだろうか、との疑問で、言われてみれば確かにそうである。

「御社が、提供されたことは?」
「1回もありません」

  私の哲学は、ご遺影は人目に晒すものではなく、最低限度のマナーとしてもご遺族や施主側の了解を得るべきだということで、常識あるご遺族や施主の立場であ れば絶対に許可をされる筈はないと確信しているし、弊社のようにオリジナルソフトを有すると、業界雑誌に公表する気にならないという考えも伝えた。

「こ れ、遺族や施主の了解を得ずに、葬儀社単独の勝手な行為としたら大変な問題ですよ。それに、仮に許可をされたとしても、掲載後に誰かに指摘されて愚かなこ とをと後悔しても、どうにも解決出来る問題ではないでしょう。社会部の記者としては、大きな興味を抱きますし、読者の意見を確かめたいですね」

  これは、大変である。読者がどんな意見を出されるか確実に見える。許可を得て提供している業者であっても糾弾されることは間違いなく、それこそ遺族から解 決不可能な怒りを受けるだろうし、「故人に申し訳ない。故人が悲しんでいる」と言われたらお終い。1回も提供していなかってホッとした瞬間であった。

 雑誌を発刊される方々には申し訳ないことだが、こんなことが記事掲載になれば、それこそ社会問題に発展するだろうし、何より、業界のモラルの低さとイメージダウンが伝わることが悲しいところである。
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