2009-03-14

ハンデを背負っても  NO 2364


 休載していたのに早速ご笑覧くださった方もおられ、メールを頂戴して恐縮。ご返事は叶いませんが衷心より手を合わせます。

 昨号には「隊員」が「退院」となっていたように、転換ミスや誤字脱字がいっぱい。不自由な目と指なのでなにとぞご理解をと願い上げる。

  もう、ピアノやギターを弾くことは出来ないだろうし、時折に楽しんでいたゴルフもダメになった様子。晩年に車で東北や北海道の温泉めぐりを夢見ていた我が 夫婦だが、目が不自由になれば運転もダメ。列車という選択をしても、素晴らしい景色さえも疲れの対象になるとすれば寂しい話。何とか目の回復が早いことを 祈ってしまう。

 それにしても「嚥下(えんげ)」とは恐ろしいもの。誤嚥の苦しさを体験したら飲食を口にするのに恐怖感を抱き、食事そのものが苦痛となってしまい、食事タイムに消費するエネルギーの大きさには参ってしまう現実がある。

 嚥下テストという検査があった。レントゲン室に様々な料理が運ばれ、それをバリウムに浸して口の中に入れて撮影するものだが、ものがバリウムだけに異なる恐怖感を感じた体験だった。

 その後、嚥下訓練食テストというものがあり、お粥100グラムから野菜などの副食物全てをペースト状にしたものを出され、5分ほどで食される量を1時間10分も要してやっと終えられた。

 そんなペースト状の食事が「嚥下訓練食1」から始まったのは一週間ほど前だったが、その後「訓練食4」まで進んできており、現在も「とろみ」が付けられているが、主食のお粥も米の姿が見え、200グラムを経て350グラムになっている。

  第一回目の際、「お話しが」と療法士さんにお願いしたことがあった。それは私に病的な偏食があるということ。嫌いなもの全てと数少ない好きなものを申し上 げたのだが、あまりのひどさに呆れた表情をされた彼女、その後、栄養士さんと相談のうえ、申し訳なくも嫌いなものを一切メニューから外してくれて恐縮して いる。

 運ばれてくるトレーの上に私の名前が記されたプリントがあるが、そこに「肉禁」「魚禁」「えび禁」「かに禁」と打ち込まれ、毎食に「木綿豆腐」か「玉子豆腐」が添えられた配慮が成されていて感謝の合掌である。

  嫌いなものを食べずに残せばそれだけ体力低下につながり、リハビリにまで影響を及ぼす。故に完食するメニューとなったのだろうが、歩行、発声、運動などに 共通するのが腹部筋力の強化の必要性で、それは飲み込むパワーという嚥下にも関係してくる問題であり、今後の大きなキーワードとなっている。

  そんなところから悪巧みを考えた私、過日にデザートとしてプリンが出たところから、関東に在住する娘に地域限定のプリンを送って貰い、食欲不振時にと備え てあった北海道の期間限定のコーンスープ、それにドンクのお好みのパンを買ってきて貰いおやつタイムにパクパク。これを2日間続けたら、今日の朝食前に計 測した体重が60キロをオーバーしていたのでびっくり。これで得られたパワーを腹筋強化につなげたいと考えている。

 しかし、神様は次々 に試練を与えてくださるではないか。上述の悪巧みの買出しや配達をしてくれる筈の妻が緊急入院を余儀なくされ、ひょっとしたら手術という状況にあるそう だ。深夜に激痛に襲われ、真向かいの先生の携帯電話で救いを求め、エコー検査で「胆石」という現実が発覚したそうだが、前々から懸念していた持病が「より によってこんな時に」というのが正直な思いで運命のいたずらに困惑している。

 ベッドの上に座ると右に倒れてしまい立つと左へ倒れる不思 議な状況、リハビリの先生によると内面の筋肉低下が原因とのこと。そこで筋トレと脳トレの「両方」が「療法」の要となる。リハビリテーションセンターから 拝借してきたパイプ式の低い歩行器で廊下を歩き始めた私、もうすぐリハビリ専門病院に転院が決まっているが、現在の病院で出来る限り改善に向けて取り組む つもりである。

 そうそう、発声のリハビリの際に面白いことがあった。美人の療法師さんが「歌って見ましょう」と歌詞集を3冊持ってこら れ、「演歌などどうです?ブランデーグラスは?」と仰った。「演歌はダメです」と言い切った私、すぐに目次を開き目に留まったのが「里の秋」で、「失礼し ました」と返された療法師さんの表情が複雑だった。

 様々な検査を受けた。「ガーン、ガーン」と鳴って気が変になりそうな「MRI」も5 回受けたし、胸のレントゲンが8回、喉の検査で耳鼻科の内視鏡を鼻から入れられた時の気持ちの悪さは忘れられないし、初めて体験した不思議な目の検査も驚 きの世界。他に頚部の超音波検査が30分以上も続けられたのも疲れたし、病人とは何と辛いものだということを身をもって実感した。

 週に一度の清拭や10日に一回ぐらいのベッド上でのシャンプーも体験したが、昨日はシャワールームで気持ちよいひとときがあった。女性の担当者が全面的に介助してくれるのだが、シャンプー、髭そりも自分で行い、背中だけ洗って貰ったら「楽な患者さんだこと」と驚かれた。

 午後6時に夕食だったが、完食したと思ってお茶を口にしたら大失敗。2割ぐらいを戻してしまったので猛省をしている。もっと臆病にならなければならないと再認識。

 退屈な入院生活だが面白い患者やユニークな看護師さんにも出会った。次号では、そんなひとこまを書こうと考えているのでお楽しみに♪
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