2003-05-25

北の国から   NO 440

特急「はるか」で関西空港に行き、札幌便のゲートに着いた。SARSの影響からか、マスクをした人が目立つ。

 搭乗の15分ぐらい前に案内放送があったが、待合コーナーにいた人達に「どよめき」のような何とも言えない声があった。

 「エールフランス便から札幌行きのお客様、タイ航空から札幌へのお客様。70番ゲートにお越しくださいませ」

 そんなアナウンスがその原因。しばらくして機内に案内される通路で、1人の女性が連続のクシャミ。「SARSじゃないだろうな?」という冗談でなさそうな声も聞こえた。

 やがて機内のシートに着席。私の左側に70歳ぐらいの女性が2人おられる。機内アナウンスでベルト着用が促されたが、お2人は何をするのか理解されていない様子。私がベルトをすると、「それ、どこにあるのですか?」

 見るとシートベルトはお尻の下に敷かれたまま。アドバイスをしながら話をすることになったが、お2人は4泊5日の北海道旅行。飛行機は初めてということだった。

 イヤーホーンの使い方も説明し、何度も「有り難う」と恐縮されたが、着陸する5分ほど前、お2人が揃って指で耳を塞がれていることに気付いた。どうやら気圧の変化で苦痛のご様子。そこで「唾を飲み込まれたらいいですよ」とアドバイス。

 「あっ、直った。嘘みたい?」 今度は手を合わされて感謝され、こちらが恐縮する。

 離陸時に少し揺れがあったが、定刻通りに千歳に到着。「お気を付けて。よいご旅行を」と声を掛けて先に出た。

 今、この原稿を旅館で打ち込んでいる。全国的に名の知れたこの旅館。大浴場内が3階建てというのも売り物。今回で確か6回目だったと思うが、男1人の宿泊は歓迎されないもの。

 部屋担当の仲居さんに「気を悪くされないように」と偏食の事情を前置きしておいたが、食事を終えて片付けに来られた彼女、「これだったらお好きなものだけを伺っておくべきでした」と言われてしまった。

 この旅館はとにかく広い。部屋から大浴場に行くのに5分以上を要する。今日は日曜日だが宿泊客が思ったより多い。北海道はこれからが最高のシーズン。旅館までの道中で桜の花が咲いているのを目にして驚いた。

 部屋に来られた私と同年代ぐらいの女性のマッサージさん。この数年でお2人の子供さんが亡くなり、ご主人も脳梗塞で倒れられ入院中のとのこと。

そんな不幸な人生の黄昏に、『辛い思いをしただけ、他人にやさしくなれるそうです』と、変なアドバイスをしてしまい反省。今日、えにしに結ばれた方々に幸あることを祈る。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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