2002-06-21

接 待    NO 112

ビジネス社会では「接待」ということも重要で、企業が消費する接待交際費は膨大なものである。

 社会不況にあって、接待の形式にも変化が見られるが、男性社会ではクラブなど、酒と女性が存在する世界の主流は変わらないようだ。

 私は、接待を受けることが大嫌いで、ご招待の大半をお断りしている。

 どんな仕事でも仕入先、お客様の存在があり、「する」「される」の問題が発生し、その背景には「義務」と「権利」という言葉まで飛び交っているが、「されたくない」という権利を理解されることは少ない。

 一つの仕事で出会う、異なる分野のプロとプロ。その関係は、いつもヒフティー・ヒフティーでこそ、いい結果が生まれる。そんなかたちで友人関係となった人が多い。
 
 こんな考え方が生まれたのは、外国で受けた接待からで、「何を欲するか?」「それ以外はフリー」という接待方法に大きな喜びと共感を覚えた。

 ある時、我が業界に関係する大手企業から講演依頼を受け、雪による交通機関への影響を考慮し、前日に入る約束はしたが、ホテルに着くなり勝手な接待スケジュールが組まれており、忍耐の2日間となった苦い思い出もある。

 生意気なことを上述したが、接待嫌いの理由として、病的とも言える「偏食」がある。ベジタリアン的なタイプと呼ばれる私にとって、食することの出来ないものが登場するだけでも苦痛となり、食事の時間を過ごすなら、自分が欲するものを食したいという考え方も強い。

 さて、「今日は接待だ」と友人に誘われ、ある名の通った小料理屋さんに行った時の出来事である。
 そこは、彼のお気に入りの店で、彼がかなりの常連であることは、入店した時の雰囲気からすぐに解った。 
 
テーブルに向き合い、取り敢えずビールで乾杯というところで「突出し」が登場した時、
彼が「しまった。重要なことを忘れていた」と言うなり、私を促し、オヤジとテーブル担当の女性に謝罪の言葉を述べ、申し訳なさそうに小額の料金を支払うと足早に店外に出た。

「別の店へ行こう」。それが私への第一声であった。

「重要なことを忘れていた」と言った言葉、訊いて見ると、それは「方便」であった。

 次に訪れた割烹で、彼は、私にまで謝罪の姿勢を見せ、お気に入りの店を一軒失った淋しさを語り始めた。

 さっきの店で何があったのか?。それは、ビールをひとくち飲んでグラスを置いた時に発生していた。ビール瓶の横に置かれていた市販の「胡椒」の器。そこに張られていたシール。その文字が目に入ったというのである。

 シールに打ち込まれていた数字、それは賞味期限の日付で、中身は十分入っていたが、期限は半月前に切れていた。

 「期限」が「機嫌」を損ねる。名の通った店にも、意外な盲点があることを学んだ接待となった。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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