2007-03-20

式典の光景から  NO 1811


 昨年の今日、朝の8時過ぎに病室を出て手術室へ向かっていた。隣接する更衣室で用意された手術着に着替え、4人の患者さん達と並んで座っていた。

 そのフロアはやけに広く、幾つかの手術室の存在があり、しばらくすると順に名前を呼ばれてそれぞれの手術室へ案内される。

  最後に残ったのが私、5分ほどの時間が流れて看護師さんが迎えに来た。無言で後ろについて行き、やがて彼女が扉を開けてくれた部屋の中に入ったが、そこは 映画やテレビドラマで観る光景そのままの如何にも手術室。多勢の医療スタッフが準備体制整ったというような雰囲気で並ばれ、中央にある手術台を囲んでい た。

 皆さんの表情に笑顔が見られる。それは恐怖に怯える患者に安心感を与える雰囲気作りなのだろうが、「こちらから上がってください」と言われて踏み台を使い、自ら手術台の上に乗った時には不思議と落ち着き、<あなた達に任せたよ!>と開き直った自分に気付いた。

 同時にそれぞれの担当スタッフが動き始める。指先に血圧計みたいなものを巻いたり、胸を広げて心電図の吸盤を貼り付ける人もあったが、それが異常に冷たく感じ<もうちょっと温めておいてよ!>と思ったことをはっきりと憶えている。

 天井には多くの照明ライトが並び、配線が巻きついたアームが何本もある。それが何に使われるかは知らないが、<今から手術を受けるのだ!>という実感が強烈になった。

「は~い、麻酔の準備ですよ」と優しい言葉、すぐに左腕に点滴の針みたいなものが差し込まれ、別の人が酸素マスクらしきものをセッティング。横に立っていた点滴の液が細い管を流れ始めるのを見ていた。

「もう、薬が入ってきています。しばらくすると麻酔が効きます。あなたの身体のすべては私達スタッフが確認しながら見守っています。どうぞご安心を。目が覚めた時には手術が終わっていますから」

 そこまで聞いた時から先の記憶が消えている。幸運なことに手術は大成功。全く想定外の別の後遺症が発生して苦しむことになったが、それも一ヶ月ほど前から服用した薬で随分と楽になった。

<あれから丸1年か!間違いなく生かされているなぁ>と思いながら、夕方からライオンズクラブの記念式典へ。物故者に対する追悼の詩を朗読してきた。

 司会を担当していた幹事と掛け合いで進めるそのひととき、リハーサルで原稿手直しをアドバイス。いよいよ本番の時間というところで来賓の区長が到着されていないことに気付く。

  役所と深いつながりのあるメンバーが電話で秘書室に確認、やがて「先ほど出発したとのことです」という連絡が。5階のエレベーターの前でみんなと一緒に 待っていると、「1」の数字の上の矢印が動き出し<止まらずにこの階まで!>と思っていると「5」で止まり、扉が開いてご本人がご到着。

 正確には2分オーバーで開式となったが、小さなイライラ・ハプニングで済んで安堵した。

 第一部の式典は予定通りの時間で閉式、10分間の休憩で祝宴に入った。恒例の開演の言葉があり、すでにセッティングされてあった梅酒で乾杯に入ったが、「ご起立を」の声にグラスを手にしても口にされない人が多かった。

 私のテーブルだが、私以外は全員が車で出席。乾杯さえ不可能な社会イメージを顕著に物語る光景。「ちょっとだけよ」で加害者となって被害者を生むこともある。

「近くだから」「この程度なら」「酒に強いから」「この時間帯なら」なんて思いが「悪魔のささやき」となって後悔に至ってしまう。

 我々のテーブルの上に置かれた数本のビール、誰も手を付けずに他のテーブルへ運ばれて行った。

 そんな式典が行われた今日の会場、片隅に「天網恢恢疎にして漏らさず」という言葉が標示されていた。どうか「飲酒運転」をなさらないように願っています。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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