2004-10-08

ファクシミリに託された重み  NO 936


 また、台風。それも今年の最大級で「いい加減にしてよ!」とスタッフ達がぼやいているが、最悪の状況を想定しながら厳戒態勢。そんな中、深夜に一通のファクシミリを頂戴していた。

お母様がご逝去され、在宅医や看護師さんの温かい対応が綴られた文中に次のように書いてくださっていた。

 「母は満足そうな顔で、今ベッドに横たわっています。ご足労をおかけしますが、ご都合が付き次第、ご来宅いただければ幸いです」

 これは、ご葬儀依頼のファクシミリである。永くこの仕事に携わってきたが、ファクシミリで葬儀の受注を頂戴したのは初めてのこと。ご丁寧な文章から、ご看護に精一杯を尽くされたご家族愛の心の絆がひしひしと伝わってきた。

 このお客様は、今夏頃からインターネットで葬儀について情報収集をされておられたよう。一生に一回だけの大切な儀式、お母様の「万が一」の葬送をどのようにされるべきかを真剣に考えられ、ひとつの「かたち」をご創造された訳である。

 そこから葬儀社選びを始められたのだろうが、やがて事前相談という「えにし」をお結びいただき、ここに葬送の儀式を迎えることになった背景がある。

 朝からスタッフがご自宅に向かい、式場や日程の打ち合わせが行われた。葬儀の形式は「無宗教」形式による告別献花式。プロデュースと司会を私が担当することになった。

 お預かりした何枚かのお写真や、今は形見となった遺稿もある。多くの資料から何をどのように表現するべきか、簡単ではない選択作業から始めている。

 メモリアル・コーナー、追憶ビデオ、ナレーションだけが無宗教と思っていたら大きな勘違い。大切な「人」を送る礼節を重視するなら「意義」の完成がプロデュースの基本。導師の引導や説教に代わる部分も表現したい。それが弊社の超宗教型「無宗教形式」の特徴。

 「只今より開式します。ご遺族からご献花を。終えられたら弔問の方々も」なんて無宗教形式が潮流だが、こんなレベルで「人」の終焉を送っては失礼の極み。

 「無宗教のお通夜はどうしたらいいのですか?」そんな質問の電話をされる葬儀社さんが増えてきているが、電話でアドバイスできる問題ではない。

 「命って何ですか?」「死って? 生きるって何ですか?」「宗教って?」

 そんな研鑽につとめて欲しいものだし、「ケア」や「命の伝達式」も葬儀の重要な意義。

無宗教を担当されるなら、それこそ「温故知新」の言葉の意味を学ぶべきだろうと考えているし、単なる進行係という司会では何より礼節を欠くことになるだろうと提起したい。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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