2012-10-23

家族葬の裏側で  NO 3084


 塾生達が大阪へやって来た時、いつも利用しているホテルがあるが、数年前、ユニークなキャンペーンを行っていた時期があった。

 チェックイン時に「三角くじ」を引かせ、無料、5割引き、3割引きなんて射幸心と興
味を抱かせる仕掛けだったが、延べにすると結構な人数になったが、誰も割引になったことを聞かなかったのでみんな籤運が悪かったのだろうと思っている。

ネットの中の広告に「夫婦で温泉に行こう」というキャッチコピーがあり、1泊2食付で「1500円」と表記されていたので驚いたが、ここは観光地のホテルや旅館の紹介ビジネス。加盟するホテルに年会費の代わりに格安目玉の宿泊費を協力させているものだった。

 私は携帯電話でネットを開くことはないが、我々団塊世代の中にはスマホなどを手にネットで情報を得ている人達も多く、友人知人の中にもそんな行動が少なくないこの頃である。

  彼らと話をすると「甘い話の裏側には危険がいっぱい」という結論があり、「撒き餌に釣られないように」との会話が交わされている。それは、60年以上生き て来た人生の中で学んだ知恵とも言えるだろうが、そんな中に「オレオレ詐欺」の被害に遭った人物もいるのだから気を付けたいもの。

 価格破壊や格安という言葉が何処でも見られる世の中だが、その典型的な競争をしていた「牛丼」業界でさえ品質を重視する高額指向に転換する姿勢が見られ、「安くて良いもの」が現実離れしていた事実を顕著に物語っているように思える。

 さて、昨号で「家族葬」で後悔されるケースもあると書いたが、「具体的にどんな問題が?」というようなメールを頂戴したので書いておこう。

 病院で静かにご終焉を迎えられた高齢者の男性だが、喪主を務められるご長男は他府県に在住されており、実家にも長く帰っていないところから近所付き合いのことも分からず、家族だけでの葬儀を考えられ、病院から専門式場に直行された。

 高齢の奥さんだが、喪服の準備に自宅に帰られた祭、偶然に会った近所の方に不幸があったと伝えてしまったから事態が急変。家族と親戚で30人ほどだけで過ごす予定だったお通夜に近所や地域の方々80人ぐらいが弔問に来られ、急遽「通夜ぶるまい」を準備することになった。

  葬儀当日、司会者が「故人のご生前の思いを尊重され、ご家族だけのご葬儀をすすkめられていましたが、このようにご多数の方々にご参列を賜り、故人もさぞ かしお喜びのことと拝察申し上げます」というフォローを入れたが、争議が終わってから喪主さんが次のように語っておられた。

「親父が意外 と多くの方々と交流していたことを知りました。近所の人達から生前の話を伺って初めて知ったことも多くありました。結果として知れたことがよかったと思っ ています。ましてや、母親がこれからも実家で生活するのですから、誰にも知らさなかったら後が大変だったでしょう」

 また、知人のお通夜に行ったら、お棺と生花一対だけという寂しい現実のびっくり。担当スタッフに確認したら、それは故人が頑なにご伴侶に伝えられた「家族葬」の形式。喪主を務められる息子さんも「親父の言った通りの家族葬です」と言っている。

 彼には嫁いでいるお姉さんと妹さんの存在があり、両家のご両親も参列されていたし、自分の奥さんの実家のご両親も来られていた。そこで、喪主さんとお母さん別室で次のようにアドバイス。

「お父さんの考えられていた家族葬には問題があります。それぞれのご実家の御供花があって家族葬の意義が生まれるのでは?」

  その結果、A家、B家、C家それぞれの親族一同という生花が3対増えた。それは、決して売り上げアップのためにアドバイスしたものではなく、それぞれのご 両親の方々から「あなたはプロだ。感謝しています。お供えしたい気持ちが強くあり、出来なかったらきっと心残りになっていたでしょう」

  ご近所に知らせることなく進められた「家族葬」で、後日に「これだったら普通のお葬式を行うべきだった」と閉口されていたケースもあった。お骨になってご 自宅に戻られてから、次々に弔問の方々が来られ、それぞれに同じ説明をされることになったし、「なぜ知らせてくれなかった」というお叱りの言葉を聞くこと も生じ、お供え物を置かれるのにどのように対処するべきか参ったと仰っていた。
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