2012-10-17

北海道の続号  NO 3078


 昨号の続きだが、逃げるようにして札幌市内へ戻り、それから当別のご夫妻には申し訳ない思いを抱いており、大きな「借り」という重圧を背負っていた。

 その数年後、それをお返しする機会が訪れた。その会社が500人も着席出来るという立派な葬祭式場を建設されることになり、そのオープニングセレモニーの企画と司会を担当ことになった。

 メールのやりとりで段々とシナリオが出来上がったが、その本番の日が私のプライベートな日程と重なってしまい、皮肉な偶然に恨めしく思っていた。

 今は中学生となっている初孫が3歳ぐらいの時のことだが、娘ファミリーがアメリカに在住することが決まり、出発前に一緒に鹿児島の指宿温泉で過ごす企画を娘が描いてくれ、2泊3日の行程の2日目が記念式典と重なってしまったからである。

 当時、航空会社が信じられない割引企画を打ち出し、誕生日の前後1ヶ月間は家族を含めて特別料金だったので、それを利用して関東と大阪から鹿児島へ行くことになった。

  指宿の「いわさきホテル」で2泊の予定だったが、私は1泊だけで後ろ髪を引かれるような思いで鹿児島から札幌へ飛んだが、もしも搭乗する飛行機が事故に なったら大変と、出発前にパソコンの中にあった進行の原稿を北海道の仲間に送信、万が一の時は代行を頼むと伝えておいた。

 指宿の砂蒸し 風呂に寝転んでいる時、もう一つ気になることが頭の中に生まれ、部屋に戻ってから電話を掛けてお願いをした。それは、当日に特別に演奏をして貰うように依 頼していた音楽奏者で、大阪に在住する彼女のシンセサイザーは宅配の特別便で送ったが、もしも式場の音響設備の入力端子が合わないことがあれば最悪と、保 険と思ってスピーカーを持参して欲しいと頼んだのである。

 大規模なホテル葬で何度も一緒に仕事をした歴史があり、いつも最悪の想定をする私の性格を理解してくれていたのですんなりと納得してくれたが、そのスピーカーのお陰で事なきを得た音響システムだったのだから助かったという秘話になった。

 鹿児島から札幌までの飛行機は日本航空の子会社の機材で、幹線を飛んでいるような大型機ではなかったので心細くて非常に疲れたのを憶えている。

 さて、九州や北海道などから仲間達が来社してくれた。匠と称される葬儀のプロである彼らとの会話は役立つ情報がいっぱいあり、すぐに実践可能なことも多く、スタッフ達に指示を伝えなくては思ったことも多かった。

「弊社では、社員の給料は銀行振り込みですが、明細書を手渡す際に運転免許証の提出を義務付けています。裏を確認して行政処分などを受けていたら詰問しますし、酒気帯び運転だったら即解雇という契約なのです」

  そう語っていたのは私が尊敬する人物だが、ゴルフのマナーで最も重んじられている「自身に厳しく、他人に優しい」という世界を若い時代から実践されてお り、そんな経営姿勢は素晴らしい成長につながっている。「人<材>」は「人<財>」に育て上げなければという哲学は、今後も変わらず彼の会社の企業理念の 一つとして継承されていくであろう。

つい先日のこと。ある会社の社長が酒気帯び運転で検挙されたニュースを読んだが、誰がこんな愚かな経 営者に付いて来るのだろうかと哀れに思った。きっと、やる気のあった社員の退職や取引先が離れる問題も生じるだろう。我々葬儀に携わる人間で「加害者」の 立場になることは絶対にあってはいけないこと。

これまでに何度も書いてきた「加害者になるな」「被害者になるな」の言葉は、混迷しつつある人間社会の最も基本的な教訓であるような気がしてならないこの頃だ。

 結びに、過日の号で弊社で行われたことのある「かわいい仏画」の展示会の写真を掲載したが、作者について触れなかったので書いておこう。作者は、鳥取県に在住される日本画家「山川賀壽雄」さんで、詳しくはネットでご検索を願い上げます。

 今日の写真は随分昔のものだが、ホテルで行われた大規模な「偲ぶ会」でのメモリアルコーナー。思い出のお写真や遺作となったご趣味の世界、またご愛用のゴルフバッグやスコアカードなどを参列者がご覧になり、ご生前を懐かしく偲ばれておられた。
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