2018-11-10

NO 8375 短編小説4 あの頃 ⑲

苦労しました水野がゴルフ場に勤務してユニークなアイデアを具現化させて大きな話題になったことから、メンバーの中でも水野に対する会話や交流も増え、水野もメンバー達が他のクラブで体験して来た出来事を聞くことも重要な日課となり、その日も1時間のハーフ待ち時間になっているレストランに隣接する談話室でメンバー達と話していた。

待ち時間の1時間と言うのは食事を済ませてコーヒータイムを過ごしても少し余裕が生まれるもので、食事を終えた人達がこのコーナーに移動して過ごすことも多かった。

「この前に行ったゴルフ場で大変な目に遭ったよ。あるホールのティーグランドに立ったら煙に包まれて煙たくて涙が出て、その原因を目にしてびっくりしてね、何と刈り取った芝を処分するために燃やしていたらしく、同伴競技者の一人が嫌味を込めて『我々は狸や狐ではなく人間だぞ!』とクレームを言ったが、休業日や夕方以降の来場者がいない時間帯にするべきだと思ったよ」

「燻されただけならまだいいよ。僕は芝を焼く火が折からの強風に煽られ、ラフからフェアウェイに飛び火したから大変で、火の動きが恐ろしく速く、気付いた関係者の通報から消防自動車が到着した時にはパー4のフェアウェイとラフが全焼してしまってね、初期消火と言う言葉を思い出して全員でタオルで消そうとしたけど、火に包まれる危険性があったので避難し、そのホールを飛ばしてラウンドしたら、ハーフ分の料金は請求されなかったよ」

「冬の枯れた芝に火が点くとびっくりするほど速く火が回るよ。僕も体験したけど、作業中の溶接の火花から広がったのだけど、風が強かったので風下の方へ逃げるしか出来なかったよ。しかし、山焼きは春を迎えると素晴らしい芝になると言われているけど、それが本当だったことを知ったよ」

ゴルフ場で刈った芝を燃やすことは何処でも行われているが、バケツ一杯の水や消火器を準備して行うべきだと学んだし、来場者に何かあれば大変だと責任を感じる体験談であった。また、ティーグランドの灰皿の問題もある。特に冬場に気を付けなければならない。それは灰皿に火の点いたタバコを置いてそのままにして行ってしまう問題で、ないすしょっとの際や、ややこしい場所に飛んで行った時に多く、置いたままのタバコがしばらくして芝の上に落下して芝火災に発展してしまうことで、これらを防止するにはキャディーさん達の教育指導が大切となっている。

「カートの横転事故も多いね。スターとして2番ホールに行ったら前の組の人達の姿がないので探したら、運転を誤って崖下の川まで落ちていて側まで行ったけど、誰も負傷して田舎ってよかったけど。『我々に気にせず先に行ってください』と言われた時は無性におかしかったよ」

カートが横転して下敷きになって死亡したニュースもあったが、運転免許を持っていない人物が運転をすることを楽しみにしていることもあり、「カートの運転は公的な免許証が必要です」とゴルフ場協会で打ち出すべきではと思った水野だった。

「雷って恐ろしいね。ゴルフ仲間の一人が雷なんて怖くないといつも言っていたのだけど、大雨に遭って大きな木の下で雨宿りしていたら。フェアウェイの向こう側の木に落雷があって火柱と共に真っ二つに割れ、それから飛行機の音を聞いても『雷では?』と恐れるようになったよ」

「そうそう、雷って予想外の問題を引き起こすこともあるよね。最終ホールで雷雨にサイレンが鳴ったので切り上げてクラブハウスに戻って風呂に入っていたら停電になってびっくり。クラブハウスに落雷したそうでチェックアウト時の支払いが出来なくなり、2時間も待たされて閉口したよ」

「僕はあるゴルフ場のパー5の第3打でひだりがわのしげみに打ち込んでしまい、クラブで押さえながら確認していたら突然スズメバチが3匹飛び出したのでびっくりしたたら、そこにハチの巣があったことから100匹以上の大群が飛び出してピンのフラッグの周りを周回しており、我々はバンカーななどに身を伏せて過去るのを待ったのだけど、後続の人達が事情を知らず『早くしろ』と行って来たので『来るな!蜂だ!』と伝えて事なきを得たが、ホールアウトしてからキャディーさんから『ハチの巣に注意の看板があったでしょう』と言われて思わず『注意よりも撤去でしょう』と返してしまったよ」

いやはや様々な出来事があるものだ。時にはハプニング的なこともあるだろうが、次に出て来た問題は深刻なテーマで、すぐにスタッフ達と回避する必要があると思った水野だった。

「突然死と言うのは恐ろしいね。心筋梗塞や脳梗塞なんて最悪だよ。同伴していた人がグリーンの上でいきなり倒れてね。救急車が到着した時にはすでに息はなく、亡くなった事実を奥さんに誰が電話連絡するかとこまったことを憶えているよ」

このわ出来度体験談から学んだことは、来場者の急な疾病対応だった。一方のあった時間、救急車の手配をした時間の記録、到着時間の記録などが重要で、すぐに対応マニュアルを作って各部門で研修会を開くように命じた。

今日は勤務を終えたキャディーさんから面白い出来事を聞いた。それはこのゴルフ場の名物ほると名物ホールと称されているパー3でのことだが、そこは行けに囲まれたホールでティーグランドから橋を渡るホールだが、ここには十数羽のアヒルが放されており、来場者の目を和ませる存在になっていた。 続く
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