2005-01-06

重い思い   NO 1028


 葬儀の始まる前、地方におられる先代ご住職がご導師をつとめられることからご到着。ご祭壇の前で合掌をされた後、「この祭壇は素晴らしい」とご遺族を前に褒めてくださって恐縮した。

 現代的な花祭壇だが、故人を拝顔されやすいようにデザインしてあることがよかったみたい。信仰心厚い親戚の方々から「有り難う」のお言葉を頂戴して嬉しかった。

 ご親戚の方が60名様以上、開式前から折悪しく雨が降り出し心が焦るが、弊社が備え付けてある100本ぐらいの傘が貸し出されていてホッとしながら、お手持ちのコートをお召しくださいというアナウンスが歓迎されたよう。

 進行はいつもと異なる形式に組み替え、奉儀とナレーションを被せるバージョン。それは、引導文が喪主様の手に渡される式次第を予測したから。

 敷き詰められた座布団の下は板間だが、床暖房が施されてあり暖かい。しかし確保出来る空間スペースが狭く、中で動き回る女性スタッフの行動を最小限に命じていた。

 ご出棺前の命の伝達式、2歳から小学校低学年の5人のお孫様、「お爺ちゃん、有り難う」と泣き出して貰い泣き。1時間ではちょっと「きつい」葬儀だったが、お別れ時間は大切に。ご出棺の頃、雨が小降りとなっていた。

 事務所に戻ると明日と明後日の葬儀の準備でパニック状態。手配関係にミスがないかと確認をさせる。次々に掛かって来る電話対応も大変だ。「隠れ家」でシナリオを打ち込む時間が落ち着かない。

 これでは納得する草稿が不可能だと判断、気分転換にコンビニに出掛け「助六寿司」に「おでん」を買ってきたが、タイミングよく帰社した2人のスタッフ、私が嫌いな「巻き寿し」にありついてパクついていた。

 今日、来月の出張予定がまた増えた。新幹線で行ける所だが雪が心配な時期。雪で何度かスケジュールを狂わされた苦い体験も過ぎってくるし天候確認も需要だが、ホテルの部屋から発信することになる重いパソコンを持参する辛さも伴ってくる。

 夜、花柄のお柩を選ばれたお客様が気になりお通夜の式場へ。柄にマッチした花で上手く囲まれてあり安堵した。

 故人は、明治生まれの95歳。謝辞に続いて大凡が頭の中に入っている年表を基に、当時の社会背景をお話し申し上げた。

 この年、衆議院を通過した普通選挙法が貴族院で否定され、ちょうど蓄音機の普及が始まりデカンショ節が流行した頃だった。

 私は、時折に即興で人生物語を話すことがある。それは前以って故人の人生を伺っているから可能なことだが、ここでの「命の伝達」も重要で、お通夜の方が参列者の多い最近の傾向には、絶対に不可欠だと考えている。

 このコラム「独り言」やナレーションなどでパソコンに文字を打ち込むことが多くなった。それで重量に変化が起きる筈はないが、日々にパソコンの重さを感じるようになり、他人の葬送を担当する責務の重さが伝わってくるよう。

 30代、40代、50代と、それぞれに葬儀に対する思いに変化があったが、まだまだ勉強しなければならないことが多く、自身の仕事に関して「この世」に心残りがないよう旅立つために精進したいと願っている。

久世栄三郎の独り言(携帯版)
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