2002-07-24

過剰サービス  NO 144

東京に出張することが多く、これまでに都内の約70のホテルに宿泊体験があるが、お気に入りは6箇所で、ここでは差支えがあるのでホテル名は割愛させていただく。

 ある時、全国のホテル関係者を対象とするセミナーが開催され、講師を担当した。
 出席者はバンケット支配人だけではなく、総支配人、総副支配人、専務、社長という肩書きの方も多くあった。
 
その講演の中では仏事サービスだけではなく、宿泊からブライダルまでのホテルの総合サービスについて話し、全国各地に出掛けるが旅館が好きであることも吐露していた。

 その1週間後、また上京することになり、夕刻に着いた東京駅でホテルの宿泊予約を入れた。

 お願いしたのはシングルルーム。先に行きべき所があり、チェックインは2時間後ということで予約が取れた。

 そして2時間後、フロントでチェックインを行い、ボーイさんの先導によって部屋に案内された。

 扉が開けられた時、部屋の予約に誤まりがあったのかということになった。
 部屋は和室、それも誰が見てもスイートルームである。

「間違っていませんか? シングルルームをお願いした筈ですが?」

「生憎でございますが、本日はシングル、ダブル、ツイン共に満室でございまして、こちらのお部屋をご用意申し上げました」 

 ボーイさんは、そう言うと、部屋代はシングルルームの料金で結構ですと、いかにも申し訳なさそうに応えた。

 東京駅での電話では、シングルルーム、ツイン共に空室があった筈。それがどうしてこんなことになるのだと不思議な思いに駆られた私は、携帯電話で「今日の宿泊は可能ですか?」と交換台を通して宿泊窓口に確かめてみた。 

「ツイン、ダブル、シングル、すべてに空室がございますが」という返答。
 これは、おかしいと思って、上着を脱ぐまでもなく、荷物を手にフロントへ向かうことにした。

 お客様が途切れた頃を見計らい、低姿勢で「何かの間違いでは」と事情の説明を始めた。

「ご確認までなさったのですか? 申し訳ございません。実は、お客様は、当ホテルの特別なお客様リストのメンバー様なのです」

 説明されたことによると、私が知らない内にそんなメンバーになったのは1週間前。このホテルの総支配人が過日のセミナーの受講者であり、次の日に宿泊窓口のコンピューターに登録されてしまっていたからであった。

 やがて宿泊支配人という方が登場され、私が「過剰サービスはホテルサービスとしては失格では」という発言に対して、「私達を助けるということで」と懇願され、折衷案としてツイン料金を支払うということで決着した。

 立派な桧風呂に入り、マッサージをお願いしたが、マッサージさんが、「お客さん、こんな広いお部屋に、お一人で何をされておられるのですか?」との質問には返答することが出来なかったが、その後、そのホテルに宿泊することはない。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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