2002-12-22

成長と斜陽の裏側で   NO 291

少子高齢時代の到来は、我々葬祭業界にとって追い風であり、社会では成長産業と判断されているようだ。

 現在、1年間に約94万人の方が亡くなっているが、私のような団塊世代があの世に迎えられる頃(2015年から2035年の間に新記録が)最高で年間に180万人と予測され、その後に減少傾向に入ると言われている。

 そんなことが成長産業と捉えられたのだろうが、私は、絶対に斜陽産業という考えを抱いている。
 
 社会不況の中で様々なアウトサイダーの参入もあるし、何れは外資の進入もあると予測しているが、その分析の最たるものは、お客様のニーズ変化と社会の意識改革だと断言する。

 「次の方、ご案内」というような、安易なパック形式やセット価格で人生終焉の儀式をされたくない考えも強く、マニュアル対応しか不可能な大規模葬儀社や互助会組織の崩壊も始まって行くだろう。

 葬祭業は、非日常的な葬儀ということに胡坐を掻き、お客様の無知のうえに成り立ってきた産業であり、これらに併行して、進歩なく留まっていた宗教者と共に変革の逆風を受けているのである。

  そんな中、コンビニで「葬儀を受け付けます。支払いも可能です」という、アルバイターが人生終焉の儀式の窓口という低次元なサービスも登場し、一方には 「葬儀の総額が60万円、全国一律すべて込み」という、我々が外注を頼みたいような低価格を売り物にする組織団体も登場している。

 これらは、FCのビジネス展開を発案したところだけが利益を得るシステムであり、加盟した業者と利用したお客様が、何れに泣きを見る現実を迎えるだろう。

 上述の「すべて」とは、一体、何だろうか。我々プロ達が分析してみると次のような疑問が生まれた。

 親戚の人数は?。精進料理の単価と数量だけでもどんなことになるか?
 お寺様のお布施も宗教や人数によって大きく変化する。
 会葬者の人数が一定でない。供養の品や返礼品だけでも数十万円の変化がある。

 これらを列記すれば数十ページを要するが、それらを明かす必要もないだろう。
上記だけでも不可思議な価格設定ということが見え、一般常識からすると絶対に信じられないことで、低価格表記が「餌」となっているビジネスだと分析した。

 ましてや、今時にセットパック形式の白木の祭壇を売り物に発想するとは、消費者を馬鹿にしているレベルである。これらの宣伝表記は、法的な観点からも逸脱しており、問題が表面化した時の責任をどうするのか危惧を抱いている。

 そういう事態を招いた時、悲しみの遺族を二重に悲しませることになるし、我々葬祭業界のイメージダウンと葬祭文化の創造が遠のくことも心配だ。

 この団体のことを、メンバー達が次のように言ったことがある。

 「まだ祭壇を売り物にしているの? 祭壇を必要と考えないお客様も登場されてきているのに。人生表現や多様化と個性化が重視されている時代に、何を考えているのだろう。 消費者は、そんなに馬鹿じゃないよね」

 宣伝戦略には長けているようだが、敢えて、この団体名は表記しない。なぜなら、弊社や協会の理念と全く逆発想の組織であり、はっきり言って競合の対象にはならないからだ。

葬儀を行うには遺族が真剣に考えるべき。そんな業者を選ばれることは、選ばれた方にも責任があるというご認識も重要で、騙されたと知って、最も悲しまれるのは故人である。

葬儀は、一生に一回限りの重要な儀式。お心残りのないように祈って止まないのです。
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