2002-07-08

シナリオになかった台風の襲来  NO 129

大きな台風が近づいて来ている。水不足に深刻な奈良県では、被害が及ばないことを願いながら、台風のもたらすであろう雨への期待もあるだろう。

 人間は、自然の猛威に対して無力。ただ、そこで生まれる「人災」という言葉に嘆き悲しむことだけはしたくないもの。

 我々葬祭業にとって最も恐ろしいのは強風で、この仕事に従事してきた歴史の中で何度も震え、泣かされてきた苦い思い出がある。

 死を迎える瞬間の訪れにTPOは一切なく、これも自然の摂理であろうが、天候、気象による環境であっても、遺族や参列者の葬送心の中に、複雑な「怒り」が発生するのも現実である。

 前にも書いたが、こんな時の交通機関の乱れは悲しみのダブルパンチ。臨終に間に合わなかった悲劇や、大切な終焉の儀式にさえ参列出来ない不幸もある。

 さて、今、私は、大変な問題に対峙している。目前に迫った北海道研修会のシナリオになかった、大きな台風の襲来である。

 九州、四国を始め全国から参加するメンバー達。彼らが予約する飛行機の欠航でもあれば大変だし、講師担当の立場にある私が到着しないことになれば、出席メンバー達に大変な迷惑を掛けてしまう。

 私は、何処かの狂言師のような神経を持ち合わせず、これまで受講者に迷惑を掛けたことは1回もないが、今回の台風だけは頭を痛め、一人でも出席出来ないメンバーがあれば申し訳ない気持ちで、台風という不運に恨みを抱きながら対策を練っている。

 今からインターネットの台風情報を見ながら考えることになるが、少なくとも明日の午前中には自身の行動決断をしなければならず、メンバー達との情報交換による最善の対処を迫られている。

 自分側の都合だけをしたためることはいけないこと。航空会社、フェリー会社や鉄道関係者も皆さんも大変だろうし、ブライダルや旅行を予定している方々も、やきもきされておられることだろう。

 今日亡くなられて明後日の葬儀となっておられる方々にも大変なこと。

明日の夕刻に行われる弊社のお客様も、お骨あげは明後日の朝。今の予報からすると暴風雨の中で行なわれることになる。お悲しみのご遺族のご心中はいかばかりであろうか。

人生のメモリアルデーとなる時に訪れた台風。それは、将来に忘れることの出来ない思い出となるが、あまり遭遇したくない出来事ではある。

 時計を見ると、もうすぐ午前0時。すぐに送信しなければ発信の日付が変わってしまう。

取り急ぎエンターボタンを押し、そして、時刻表を調べることにしよう。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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