2004-12-17

悩みは進化の基   NO 1008


 過日の「葬祭セミナー」にご参加くださった男性司会者さんからメールを頂戴した。「全国の葬儀司会者さんのために『独り言』で表記を」という一文があったので一部の紹介を。

 「カルチャーショックでマイクを担当する気力を失いました」としたためられてある。<なんと罪なことを!>と思いながら、すぐに返信申し上げた。

 これまでにあちこちで勉強され「技術」に自信を抱かれておられたそうだが、司式バージョンを体感され、今までの全てが崩壊する衝撃だったとも書かれてあった。

 宗教に関する言葉遣いを真剣に勉強されたそうだが、「愛」や「癒し」について考えられなかったよう。「命の伝達」という言葉の意味が何より強烈だったみたい。

  当日に放映したビデオ映像の中、彼が「これは、何なんだ!」と思われたシーンが幾つか。ある文化ホールで行われた社葬のひとこま。伴侶であられるお婆ちゃ んに連れられたお孫さん達が行われた儀式。そして、大規模なホテル社葬の中で委員長や副委員長よりご伴侶を優先させた献花順位。

 広い会場内の光景が映し出される場面もあったが、その中に登場される参列者の表情が「よかったね」というあまりにも優しい。不幸の中で不幸でないひとときの創造。

 彼は、これまでの多くの葬儀の体験の中で、「あのような表情を一度も見たことがありません」とも書かれている。

 これらの社葬は無宗教形式の告別献花式。進行の全ては音楽と私の言葉だけ。もちろん、アシストしてくれる多くのスタッフの存在があるが、会場空間を式場空間に神変させた世界。そんな映像に、彼が一参列者の立場に惹き込まれてしまった結果だと思っている。

 前から私の名を知っておられたとのこと。いつかご自分の技術を披露したいと思っておられ、いい機会だとご参加されたのが動機だったそう。

 「全く想像した世界ではありませんでした。葬儀の司会って『技術』でないことを知りました。『孫を持つまで謙虚に』という言葉の意味を学びました。カルチャーショックから立ち直ることが出来たら、きっと私の司会が変わっていると思います」

 この一文、私にとっては何より嬉しいこと。彼は、必ずや与えられた式場空間を優しく包むような司会者となれるだろうし、近い将来に「司式」を目標にされることになると確信している。

 それでご遺族が癒され慰められる。参列者が時に緊張されホッとされる。そんな司会者が増えてくれれば葬祭文化の向上があるし、葬儀の司会が確実なプロの仕事として認知されるだろう。

 葬儀の司会、それが単なる「進行係」であることに気付かれ、<何かが違う・これではいけない>と疑問を抱かれ、その探求が始まった時に初めてステップアップ出来る仕事である。

 そうそう、返信の結びに入れたのがプロデュースの重要性。上述の部分では司会よりプロデュースの方にウェートがあるから。シナリオを与えられる司会者から、シナリオを創作するプロデューサーを兼ねられる司会者へ。

悩まれたら、どうぞ「隠れ家」に。心から歓迎申し上げますのでご安心を。
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