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2002-08-21

皮肉なことにならないように   NO 172

早朝に九州から電話が入った。大規模な偲ぶ会が今月の末に行なわれるとのことで、司会やプロデュースの要望である。

「何とかするよ」と応えて電話を切った後、今度は、大阪の同業者から「すぐに会っていただけませんか。これから参上しますから」という電話が入った。

 20分ほどして若い2人の方が来社されたが、彼らは息子さん達で、入院中の会長の様子を話され、何れ行うことになる葬儀の司会を依頼されてきたのである。

 この業者さんは大阪でも歴史ある業者として認識されており、会長という人物は永年に渡り保護司や民生委員をつとめておられ、葬儀に対する哲学で私と共通する部分もあるが、先代からの交流もあり、私が司会を担当しなければならないとは思っている。

 九州への出張予定のことを伝えると、日程は調整しますとのこと。
心から申し訳なく思い、存命中に失礼の極みだが重ならないことだけを祈るばかりである。

これまでに、こんな思いをどれだけして来ただろうか。私の仕事にとって「来る*月*日」という予定は最大の悩みでプレッシャーとなり、これからの1週間ぐらいのやりとりを考えると大変だ。

 世の中に「皮肉」という言葉があるが、こんなことに限って重なってしまうもので、これまでの体験からすると、重なるであろうというパーセンテージは80パーセントと、極めて高い確率となってしまっている。

「1回限りの大切な終焉の儀式。だからあなたなの。これは確約よ」と、事前相談のお客様に何度言われたことだろうか。

業者からの依頼には、私のピンチヒッターも考慮することを願っているが、お客様にはそうは行かず、時間の調整をお願いしたことも少なくない。

 しかし、今回はなんと言っても一方は九州である。新大阪から「のぞみ」と「つばめ」に乗り継いで式場に到着するには4時間は要するし、打ち合わせやスタッフのリハーサルを考えると前日入りが原則となってくる。

 今、病床で病魔と闘われる会長との懐かしい思い出を振り返りながら、1日でも1秒でも長生きをしてくださいと手を合わせているが、「皮肉」という言葉を消し去りたい思いも抱いている。

 プロである以上、後悔する仕事はやりたくないし請けたくないもの。自身が持つ最高のパワーレベルで臨みたいと願い、今、ギヤを入れ、アクセルを踏み出したところだ。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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