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2002-08-24

拡声器と言葉    NO 175

司会の研修にあって、初心者だけではなく、そこそこのベテランでも大きな勘違いをしていることがある。それは、マイクの向かって話し始める際に「構えてしまう」ということ。

 日頃の日常会話のように自然に話すこと、それが極めて重要なことを忘れてしまうことだが、緊張というプレッシャーが原因していることが多いようだ。

  指導する場合、比喩としてよくゴルフの話をする。練習場で多くのボールを打つことではなく、スウィングをつくることに徹する。正しいスウィングには美しさ が生まれ、そこでたまたま存在していたボールに当たって飛んでいく。それがゴルフの重要な理論であるが、冒頭のマイクの問題も、これと同じことが言えるの である。

 マイクにはアンプとスピーカーの存在があり、古くはこれらを総合して「拡声器」と呼んでいたが、この言葉の文字を考えてみれば答えが見えてくる。

 普通にオシャベリをしている。そこにたまたまマイクが存在し、会場に拡声されて伝わっていく。これが司会トークの基本中の基本となる筈なのに、この便利な機能を勝手な思いで誤解してしまい、「構えてしまう」ことにつながるのである。

 発声法は別にして、取り敢えず自然におしゃべりをすることが出来れば、後は言葉遣いとトーク技術を研鑽すること。その先には「河水洋々、北流活活」というプロの世界があり、一般的に言われる「活本強」が発生しないように活舌の訓練をするのである。

 最近、日本語が乱れていると多くの専門家が指摘しているが、テレビに登場する司会者にもひどいレベルが少なくない。言葉のスタートに必ず「えー」という接続の表現をする著名な人物もいるし、敬語の誤りなどは数え切れないほどのものとなっている。

 講演を拝聴していて疲れることも多くある。トーク技術の基本が出来ていない場合で、例として次のようなことがある。

「これはですね、このようになってですね、こうなるわけですね」

 この「ですね調」は男性女性を問わないが、これに似たケースで女性特有のものもある。

「これはね、私がね、昔ね、見に行ったときにね」という、語尾に「ね」がつくタイプで、寝つきが「悪い」筈なのに、耳で疲れた受講者が睡眠中という光景となってしまう。

 上記は、NHKの教育テレビに登場される大学教授にもおられ、講義を受ける学生達の熟睡光景が浮かんでくる。

 過去ログに書いた「思います」や、言葉の接続の度に登場する「あのう」や「えーと」という耳障りな言葉表現。これらをカットすれば言葉は見違えるように美しく聴こえるものである。

 スポーツ選手のインタビューで多いのが「やっぱり」を接続の言葉とするオンパレード。ひどい人は、1分間に8回ぐらいも飛び出してくる。

  今日のご訪問へのお礼として、この「やっぱり」を少なくするテクニックを伝授申し上げる。「やっぱり」の連発は表現する言葉に自信がない証拠で、それはイ ンテリジェンスのバロメーターとして伝わってしまうものだし、「やっぱり」に続く言葉はどうしても早くでてしまうもの。

 そこで簡単なテクニックとなる訳だが、「やっぱり」を自身が意識して、「やはり」に変えること。これだけで「やっぱり」は見事に半減することになるし、続く言葉にゆとりが生まれる相乗効果もあるからお試しを。
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