最新 最古
2002-09-05

北 枕    NO 186

ご不幸が発生し、葬儀の依頼からご自宅に伺うと、すべてと言っていいほど「北枕」という言葉を耳にする。

「こっちが北だから」、そんな誰かの発言から裏口に枕が向けられてしまうこともあった。 

 北枕、これは、誰もがご存じのように「お釈迦様」の涅槃に因んだものである。

  地球の地質学を専門とされるある学者が、「人間が睡眠する場合、北枕がベターだ」と書いていたが、これは、地球の磁場に関係するところからだそうで、医学 的にも証明されているとのこと。しかし、生きている人が「縁起でもない」という心情から、北枕で寝ているパーセンテージは非常に少ないものと推測する。

 お釈迦様の研究をされている仏教学者から、涅槃の際の頭北面西は、お釈迦様の故郷が北の方向にあり、命終を悟られた時の故郷への思いが、そんな涅槃のお姿になったという説もあることを教えていただいた。

 限られた土地の有効利用をしなければならない我が国。不動産業者、建設業者が北枕のことまで考慮することはなく、6畳の間や8畳の間に、ご遺体を斜めに安置しなければ北枕にならないことも少なくない。

 ある葬儀で、上述に関する興味ある話題の進展があった。

その式場となった会館は、祭壇に向かって左側が北の方向にあたり、ご遺体の頭部が左側に向けられるのが普通だが、私は、敢えて右側という指導を社員に行った。

やがてお通夜の勤行を終えられたご住職が、「?」を抱かれたようで、社員の一人に私の本意をとおっしゃられた。

 さて、葬儀の当日。お寺様の控え室で打ち合わせの際、この問題に関して持論を披露することになった。

「西方浄土思想の宗教では、ご本尊の存在される方向を西と考えられないでしょうか?。そうすると向かって右が北となります。あるお寺様が頑なにご指導されておられるのです」

 私は、随分昔に読んだ仏教書にあった文字を思い出していた。それは「以信転方」という言葉で、「信ずるを以って方角を転じる」という意味で、そのことについてもお話をしてみた。

「面白いですね。一理ある考え方です。次回の住職研修会で論議するテーマになりそうです」

 ご住職は、そうおっしゃられたが、どんな結論となられるのか、早くご意見を拝聴したいと願っている。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
携帯で下のQRコードをスキャンするか
 または
携帯に下のURLを直接入力します。
URL http://m.hitorigoto.net