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2003-03-06

教育の歪み   NO 364

ある事件を伝えるテレビを見ていた。若い女性が殺害されたという事件。女性リポーターが警察の前でコメントを伝えている。

 その彼女を囲むようにして野次馬らしき人々が30人ぐらい映っている。大半が若い人で、その多くがテレビに「映ろう」という行動が見える。

 そんな中、「Vサイン」を出している人が数人いた。

 <自分の愚かさを曝け出してどうするの?>

 私は、つい、そう叫びたくなった。悲しみの遺族や友人達が見ていたらどうするつもり?

 彼らには、そんな思いが消え失せている。

これらは、自然災害の現場を伝える現地リポーターの光景にも多いし、被災地や被害者の家の前で記念写真を撮影している光景を見たこともある。

 一方で、ある中学校の校舎の前で葬儀が行われた時のこと。前日に設営をしていていると、式場を拝借したお寺の奥様が申し訳なさそうに私に伝えられたことがある。

 「この学校の生徒、どうにもならないのです。遺族や参列者に罵声を浴びせるのです。何度も学校側にお願いしたのですがどうにもならないのです」

 このお寺で弊社が担当したのは初めて。通夜の最中、スタッフ達にそのことを伝えて次の日を迎えた。

 葬儀が行われたのは午前中。チャイムが聞こえて休み時間になった時のことだった。2階と3階の多くの教室の窓が開けられ、愚かな生徒達の罵声が始まった。

 「おめでとう」「地獄へ落ちろ」「坊主丸儲けやな」

 「めでたい、めでたい」という数人の唱和もあった。後方で先生らしき人物が制しているようだが治まらない。見るに見かねた会葬者の方が「馬鹿者」と叫ばれた。

 「おっさん、何や。おっさんも地獄行きや」

 生徒の中にはセーラー服も見え、黄色い声も聞こえてくる。ある程度の想像をしていたが、これ程にひどいとは思いもしなかった。

 彼らにも親の存在がある筈。家庭でどんな教育をされているのだろうか。これこそ親の顔を見たくなったものだ。

 やがてチャイムが鳴って静かになった。教頭先生らしき方が謝罪に来られている。参列者から「何という学校だ。どんな教育をしているのだ」と怒りの声がぶつけられるが、ただ頭を下げるばかり。本堂内で悲しみ儀式が続いている。

 暗いニュースばかりの社会。こんなところにその「DNA」が潜んでいるような気がしてならない体験であった。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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