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2003-07-31

社葬の秘話から    NO 502

ある会社の社長の社葬、それは「告別献花式」という弊社のオリジナル形式で行われた。

式場として選ばれたのが大型ホテル。会社側とホテルが合議され、弊社にご用命をいただいたという嬉しいケースだった。

当然、スタッフ達が燃える。何度も会社とご自宅に参上し、故人の人生につながる情報把握に取り組んだ。

ご遺族と共に選んだ思い出の写真。それは数百枚の中から選出したもの。その1枚1枚の思い出話に花が咲き、お食事をよばれて深夜に帰社した時もあった。

やがて、集約してきた情報や資料が私に回ってきたが、あり過ぎる情報から割愛するべき作業が大変。

「このことは、是非触れて欲しいとおっしゃっていました」

 割愛しようとすると、担当スタッフがそう言うが、言われた通りに進めると1時間30分のシナリオ構成は絶対不可能。それらは「かたち」を変えて、式次第の中のコメントとして活用する構成を組み上げた。

 社長はご急逝。会社の役員、社員に悲しみが強い。委員長、副委員長をつとめられる方も同様。こんなケースでは義理的会葬者も自然に静かになるもの。そこで、プロデュースのコンセプトに「愛」と「命」を考慮した。

 会社の総意で社長を送られる。そんな思いを表現するということから、当日の社員のお手伝いを「100人ぐらい」とお願いし、それぞれの役割分担の打ち合わせまで進んだ。

 その中の女性20名は、式進行そのものに入っていただく。それがプロデューサーとしての不可欠なシナリオ。その「仕掛け」についてスタッフと協議を進め、前日の夜に30分間のリハーサルが計画された。

 前日、リハーサルの前にマナーや社葬の意義についてレクチャーをしたが、ここで「現代っ子」らしい一面を体験したので紹介申し上げる。

 「皆さんは、今、この会社に就職をされている。それは、ご自身の人生にあって一時的なことかも知れませんが、その間に社長が逝去されたという『えにし』と遭遇したのです。
皆さんにお手伝いいただくことは非常に難しいことで、おそらく未曾有の緊張を体験されることになります。しかし、それは、これからの人生にあって大きな意味が生まれてくる筈です」

 そんな説教染みたことを話し、結びの言葉として、「皆さんは、天使や巫女さんの役割をしていただくのです。そんな思いを抱いてください。BGMもこれらをコンセプトに作曲されたオリジナル音楽を使用します」

 その時だった。1人の若い女性が手を挙げた。

 「あのう、巫女さんって、処女じゃないといけないのでしょ? みんな、大丈夫?」

 それは、恥ずかしい素振りもなく、軽い乗りというジョークだったが、場を和らげたことは確かだった。

 それから行われたリハーサルが終わった時、彼女が私の席にやって来て、次のように言った。

 「さっきは失礼なことを言ってしまいました。ごめんなさい。反省しています。リハーサル、めっちゃ緊張しました。でも、天使と巫女さんのような気持ちになったような気がしました。明日、頑張ります」
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