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2003-08-13

ステップアップ    NO 514

弊社のメモリアルサービスの事務所に、週1回、お花の先生が来られ、カウンターの花を活けてくださっている。

 いつもお気遣いをいただき珍しい花をご持参くださるが、スタッフ達にとっては、花の名称を覚えると共に、プロらしい感性に触れる貴重なひとときともなっている。

 今日、事務所には「ホウズキ」が活けられてあった。大阪の季節は、まさに『お盆』。あちこちで棚経に回られるお寺様に出会うことが多い。

 そんなお寺様の最も忙しい時期、檀家さんに葬儀が発生すれば大変。分刻みのスケジュールの中、約2時間の拘束を余儀なくしてしまう。

 「なんとか間に合うように来ます」

 昨夜のお通夜で、そうおっしゃったお寺様。役僧さんはお早めに来られたが、ご導師は開式10分前に到着された。

 弊社のオリジナルな式次第。それは、そんな事情で大幅に変更する態勢で取り組み、定刻で始まり、定刻でご出棺となった。

 朝から打ち込んだナレーション、今日は、ご当家担当責任者である女性にナレーターをつとめさせた。

 式場に向かう前、少しだけイントネーションのチェックを行ったが、1箇所だけ気になったところがあった。

 それは、亡くなられた日である「11日」の表現。彼女が最も苦手としている部分。

 やがて、本番。お客様には分からなかったが、私と彼女の目が合って、「やっちゃった」という表情が飛んできた。

 ナレーターをつとめる原稿。その中に苦手な部分があると、そこを無難に通過する成功率は低下するだけではなく、その前後にまで影響を及ぼす危険性があるが、今日の彼女のミスは、そこだけ。それは、成長している証しと言えるもの。

 彼女は、今回のお客様に3日間、付きっ切りであった。お陰で葬儀委員長さんやご遺族から「素晴らしいスタッフ」と私が褒められて恐縮したが、担当者が人生の取材を行い、自身でナレーションを担当するということは、葬送のサービスでは理想の展開だと確信している。

 そんな彼女、次の課題が残っている。それは「平成」とか「人生」という「せい」という発音。これをクリアするのは簡単ではない。なぜなら、彼女が今日まで生きてきた生活の中で、自然に誕生した歴史があるからだ。

 人は、どこかで生活が滲み出るもの。制服という身だしなみだけで解決出来ない複雑なもの。それがアナウンスという世界に秘められた「技」という部分なのである。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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