2003-04-09

声質の秘密    NO 395

遠方で行われたお寺様での葬儀を終えた。

 還浄されたのは、ご住職の奥様。多くのご寺院や奥様方の参列があり、ご本堂での厳粛な儀式が行われた。

 境内が広く、大きな駐車スペースがあったが、その一画に動物が飼われている。数えてみると約60羽、鳥かごのようなケースのそれぞれにかわいいウサギが入っていた。

 多くの人々の出入りで落ち着かないウサギ。でも、その目には悲しさを感じているような雰囲気があった。

 本来、喪主をつとめられるべきご住職のご体調が不良で、娘さんが代行をされており、葬儀終了時の参列者への謝辞を私が代行することになった。

 僭越だが、このご宗派の葬儀に対する意義を朝からパソコンに打ち込み、いつでも変えられる態勢で式場に向かった。

 謝辞が終わって式場内でお別れが進められていた時、外に出た私に話し掛けられた女性があり、「さっきの謝辞、宗派のことを理解されていて素晴らしかったわ」と言われたので成功だったようだ。

 火葬場にも私が随行し、式場に戻ると上品な感じの女性がお言葉を掛けてくださった。

 「あなた、いい声していますね」

 その方は輪袈裟を身に着けておられたので、どうやら何処かのお寺様の奥様のようだ。

 私は、自身がよい声をしているとは思わない。マイクの使い方がプロであると思っている。角度や遠近に併せ、バスやトーンをその場その場で変えているし、五線紙で例えるなら、場面と情景によって「ド」や「ミ」という音声スタートの音階を変化させている。

 これらは、今、弊社のマイク担当者にも教育しているが、それぞれがその変化の面白さに興味を抱き、実際に録音して本人に聴かせると驚くほどの変化が生じていることが分かるもの。

 しかし、上述したことは「いいカッコ」の部分の話し。本当は音響システムに秘密がある。弊社では、どこの葬儀社でも使用しないような器材を使用している。

 ご導師のご読経や弔辞のお声を拾うマイクも放送局レベルのものを用意し、屋外で使用するスピーカーも室内専用のソフトな音質が出るように組まれている。

 葬儀での拡声装置は選挙演説ではない。遠くへ聴かせる必要はなく、近所迷惑も考えればソフトイメージが大切。こんなところにも「高級」という社名の意味が秘められている
のである。

 正直に暴露すると「いい声」というのは、そのように聞こえるように創られているのです。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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