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2002-03-19

社葬での大事件   後 編

やがて、心配していたお布施は、ご親戚控え室の片隅で無事であることを発見。粗末な紙袋に入れられていたことが功を奏したようです。しかし、セカンドバッグは何処を探しても、誰に尋ねてみても見つかりません。

開式の時間が迫る、どうしようかと思ったとき、喪主様は幹部社員を呼ばれ、賢明で見事な行動命令を伝えられ、盗難に遭遇したとのご判断から、警察、カード会社などへの連絡手配を託され、「今は葬儀が重要」だと、何もなかったような態度で葬儀を始める許可をくださいました。

総責任者である私も、すぐに気持ちの切り替えを行い、とにかく「葬儀」に集中しよう。そんな思いで担当責任者を呼び、簡単に顛末を伝えてからマイクを握る。

葬儀が滞りなく終えられた後、関係スタッフを集め、不審者の確認などの情報収集にあたりましたが、なんと言ってもご多数の方々の出入りされる式場、冒頭の礼服問題からもこれといった「鍵」につながる情報は出ません。

悪いことですが、従事していた30数人のスタッフのことも浮かんでいました。全面的に信頼するスタッフ達に対して、「魔が射す」という言葉が過ぎったのも事実でした。でも、それは「お客様に申し訳ない」という気持ちに生まれた私自身の「魔」であったと後悔しています。

後日の精算の時、カードによる被害は発生していないことをお聞きし、ほっとしましたが、被害金額が40数万円、スケジュール手帳の紛失で困っておられることを耳にし、一度に疲れがやってきました。

喪 主様は、ご立派なお方でした。ご叱責のひとこともなく、「君はプロとして、防犯対策を何度も話していた。それは、社員も親戚もみんなが知っている。お布施 が助かったのはそのお陰、粗末な袋に入れるという知恵だよ。親戚達からも<私が悪い>と言われました。犯人には腹が立つけど、親父の葬儀の思い出になった と思っています」とおっしゃってくださったのです。

この事件は、その後に意外な展開で結末を迎えることになりました。1年後ぐらいに、ある料理屋さんで喪主さんに偶然に再会したときのことでした。

「あの事件、犯人が逮捕されましたよ。弁護士さんから刑の軽減を願う連絡があって知ったのですが、新聞の訃報記事や黒枠の社葬通知で各地の情報を調べ、全国への窃盗行脚を仕事にしていたそうです。
逮捕されたのは、どこかの社葬での現行犯。取調べの中で、持っていた手帳に犯行記録を丁寧に書き込んでいたそうで、そこにこの事件の社葬の日とお寺の名前が記され、私の被害確認が出来たということです」

もう、二度とあんな思いはしたくない・・・皆様も、くれぐれもご用心くださいませ
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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