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2004-03-03

忘れ物   NO 719

今日は「友引の日」だったが、遠方のお寺で葬儀が行われていた。

 東京では多くの火葬場が休日となる「友引の日」、大阪では、半分ぐらいになるだけだし、この迷信が及ぼしていた影響力がダウンしつつあるようだ。

  「大安」の日に行われたブライダル、新婚旅行に飛び立つ前の「成田離婚」という事実もあるように、六曜が生まれた国ですぐに消滅した「迷信」に振り回され るのも考えもの。しかし、人間とは弱いもの。まだまだ当分影響を受ける時代が続くだろう。迷信や占いに否定的な浄土真宗さんの啓蒙活動を期待しよう。

 今日の葬儀、残念だが私が担当出来なかった。大きなお寺の立派な本堂で行われた通夜、ご遺族のご要望で「家族葬」ということだったが、弔問者が100人を超え、スタッフ達が驚いていた。

 担当責任者から「携帯電話の落し物を保管」という連絡があった。最近、忘れ物にも携帯電話が多いが、落とされた方との連絡がついたようで、明日一番に宅配で送ることになった。

 相手様は岐阜県の方、落とされたご不便がさぞかし大変なことと拝察申し上げるが、弊社は「プライベート」の遵守には厳しく、事務所に入った時点で封筒に入れ封印することになっている。

 ある時、事務所に来られたお客様が手帳を忘れられたことがあった。それは、すぐに封印され、封筒の表書きに「**様 重要」「*時**分 封印」と記された。

 それから20分ほどしてご本人が来社、それをご覧になって驚くほど感動された。

 「こだま」の中にコートとマフラーを、また東京駅で「のぞみ」の中に携帯電話を忘れたことのある私、落とした際の後悔は想像以上のもの。これも「体感に勝るものなし」という哲学から生まれた「封印」サービスである。

 葬儀の式場には、意外と忘れ物や落し物が多い。数珠やメガネは数え切れないほどだが、忘れられない?「忘れ物」も。

 ある式場で行われた御通夜、参列者の方が幼児を伴われて来られたが、この子がグズツキ別室の和室へ連れて行かれた。

 やがて、その子が静かになった。2枚の座布団の上で気持ち良さそうにスヤスヤ。

 「これでホッとしました」

 そこまではよかったのだが、このお母さん、ご焼香が終わった際のお説教に感動されたらしく、子供を残したまま帰ってしまった。

 それから約1時間、大半の弔問者が帰られた頃、部屋の片づけを担当していた女性スタッフが子供の存在を知った。

 ご遺族やご親戚に確認するが、どなたも該当者がおられず、「この子、誰?」となったのだが、それから30分ぐらいしたらお母さんが血相を変えて戻られた。

 「電車に乗ってから気付いたのです。急行で30分も止まらなくてイライラしていました。ごめんさい」 

 悲しみの式場で起きたハプニングだったが、あの子も、もう中学生になっている筈。何かあたたかい思い出として残っている。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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