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2004-03-17

マイクの世界   NO 734

講演やセミナーに招かれ講師を担当する際、いつも気になるのが音響に対する配慮の欠如。「ただ聞こえたらよい」という程度の認識しかない場合が多く、そんな音響では精神的に疲れてしまう。

 主催者側から「音質、音量の確認を」と、前もってテストにご協力いただくのは稀なこと。<これだったら、自分の音響設備を用意すべきだった>と後悔してしまうが、遠方となれば無理な話。依頼を頂戴した時にくれぐれもお願いすることにしている。

 机上に固定されたスタンドマイクも困ってしまう。講師は、やはりハンドマイク。会場の隅々までおられる方々の表情を見ながら語り掛けるには、ハンドマイクは絶対条件となってくる。

 古い時代「接応型」と呼ばれるマイクの存在があった。これは、ラジオ放送の実況などで使用されたタイプで、今風に言うならインカムスタイルというもの。アナウンサーと解説者の会話に便利なように、帽子型ベルトで着用する訳だ。

 これは、当時、信じられないほど重量があり、放送が終わると首が痛くて担当者泣かせでもあった。

 持込型の簡易音響システムに遭遇することもあるが、スピーカーが1本というのが辛い。人間の耳は二つあり、その伝達能力が激減する。

 世界的にスピーカーのメーカーとして認識されている「ボーズ」だが、アンプにスピーカーを内蔵し、何処に置いても会場全体で同じように聞こえるという器材が開発されているが、やはり2本のスピーカーが勝るのは仕方のないところ。

 そんな中、技術開発で素晴らしいスピーカーが誕生している。2本のスピーカーでも泣き所となっていた聞く場所による均質性の統一だが、それを見事に解決させている。

 垂直方向に広がる音を最低限に抑え、床、天井からの反響音をカットする技術。そこには秘められた仕掛けが講じられている。

 何と、スピーカーそのものにムービングマイクが存在し、それが音響を察知しながら最適音に調整するという優れもの。その臨場感の高さはプロなら誰もが欲しくなる。 

 スピーカー2本で200万円超というのがネックだが、音楽専門の世界では大歓迎。デンマーク製のものである。

 文化ホールやホテルならまず安心だが、大規模な寺院などの仮設式場では音響が大変。プロデュースの中で必然として音響設備費用を組み込み表記するが、一般の方々にはなかなかご理解がいただけない苦労もある。

 選挙カーのバケツみたいなスピーカー、あんな絶叫マシーンで大切な方を送りたくない。そんなこだわりもプロの世界。

 「中に誠あれば外に形(あらわ)る」との諺があるが、それはマイクを通すと確実にダウンしてしまう問題がある反面、音響システムで倍加させることも可能なのである。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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