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2004-11-14

??号車?  NO 975


 また年賀状のシーズンがやってきた。もう数枚の欠礼状が届いているが、そんな寂しいものがこれから増えてくるだろう。

 年々に頂戴する賀状が増えるが、それだけ出すことも多くなり、プリンターを相手にするスタッフ達を泣かせる季節の到来でもある。

 振り返ってみて、賀状に表記された文章で学ぶことが多くあった。宗教者の皆様からくださるものはさすがに一般的なものではなく、<これは!>と、勉強しなければいけないと思うきっかけになったことも少なくない。

 若い頃に没頭した「金子みすず」さんや「あいだみつを」さんの世界もそうだが、「種田山頭火」さんへの入り口もそうだった。

 高僧「良寛」様の世界に飛び込んだのは喪中葉書のえにし。伴侶を亡くされたお寺様、そのお辛い思いを「良寛」様の詩で見事にご表記されていたから。

 かれこれ30年になる愛読書「大法輪」もそうだった。ある葬儀が行われたお寺の庫裏、お通夜のご挨拶に参上した際、何気なく机の上に置かれた一冊の本。それが「大法輪」だった。

 我が業界に隔月に刊行される「葬儀」という書籍があるが、発刊間もなくの頃、取材に来られた編集長さんが驚かれたのが「大法輪」のバックナンバー。狭い事務所の棚にズラリと並んでいたから。

 私は濫読タイプだが頭が良くない。どうも脳細胞の引き出しの数が少ないみたい。お陰でメモを取る行動が外せず、いつも小さなノートを持ち歩いていた。

 これまでに何度か書いた自慢話になるが、この業界で私が誇れることはただひとつ、自身が司会を担当した葬儀の半分ぐらい火葬場まで随行したこと。その往復の車内で拝聴したお話しが最高の宝物。

 宗教者、葬儀委員長、喪主さんとご一緒の車内。時には素朴な質問もあるし高度な哲学も交わされる。

 最初の頃、この車中ほど恐ろしくて緊張する世界はなかった。<知らないことを質問されたらどうしよう>と、いつもびくびく。

 しかし、少し慣れてくると悪知恵も? 勉強不足の部分をさりげなく質問として宗教者の方に。そこで得られた回答こそ「財産」、その量こそ、恐らく日本で一番多い葬儀司会者だろうと自負している。

 少なく見積もって、火葬場往復は8000回を超えている筈。往復1時間と計算しても
貴重な体験がどれだけ長いかご理解いただけるだろう。

 それだけではない、40歳頃まで「お骨あげ」にも随行していた。大阪の場合は、火葬場に納めてすぐ式場に戻り、約1時間の「御斎」のお食事を済ませて「お骨上げ」に。

 この際の車中はご遺族だけだが、闘病生活から悲嘆の心情などをいっぱい拝聴した。

 そんな歴史があるからこそ、私は進行係でない「司会者」だと思っている。

果たして、自身が霊柩車で送られる時、後方に続く1号車の車内でどんな会話が交わされるのだろうかと興味を抱くこの頃だ。
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