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2005-11-13

新聞を読みながら  NO 1331


 社会面、若者が加害者となった事件の多さに衝撃の日々。被害者の未来を奪い、自らの将来に大きな傷跡を背負うことになる現実、両者の家族の心情を慮りながら憤りと寂しさを感じてしまう。

 大学生の集団行動による犯罪も増えているが、ある社会学者がそれらを「学生の幼稚化」と分析していたのに興味を覚え、読んでみて共感した。

 辞書を開くと「第二次性徴の現れる成人への移行期」とある「思春期」だが、11歳頃から16歳頃までのこの兆候が、何処かに狂いが生じて青春期に混ざってしまっている現象だと考える私、それらは阪神高速でよく見掛ける暴走族達にも共通しているように思っている。

 はっきり断言すると所謂「ごっこ」の世界、これらは趣味の世界にも見られる時代になり、大人の社会では「道楽」と呼ばれ、若者の間では「オタク」と称されるようになっているような気がするが、他人に被害を及ぼすとは情けない。

 社説に「犯罪白書」のタイトルがあり「家庭環境の改善が急務だ」という見出し。非行少年の資質変化で処遇困難、「最近の非行少年は思いやりや人の痛みへの理解力・想像力に
欠け、対人関係を円滑に結べず、感情をコントロールできない」と指摘されていた。

 ページを次々に開いていく。やがて私の楽しみのひとつである囲碁の部分に目が留まった。解説にあったアマとプロの根本的な相違を分析する一文に感嘆しながら、ふと記憶していた光景を思い出した。

 それは、あるお寺の縁側でのこと。ご住職とお弟子さんが囲碁対局をされているのを見学していた時、高段者であるご住職が、ご自分の白石を打たれる度に呟かれていた「独り言」みたいなお言葉だが、記憶している一部を紹介させていただこう。

「形勢悪し、白石と代わりたいかな黒い石」
「決して他人に妬みを抱くでない。自分も誰かに妬まれることが多いを知れ」
「ああ嘆かわしき哉、親不孝。子が親になっても気付かんとは」
「彼女が出来ぬと嘆く前、まだ自分を発見してくれぬと思うがよい」
「今有りと、思いし花、明日に散りゆく定めでな」
「翼を描いた馬、それがペガサスと最近知った。人間の発想力は凄いではないか」

 対局の時間は1時間ぐらいだった。続いて私がご住職と打つことになったが、このような「独り言」は、一手一手に出てくるもの。そこで教えられた「味」のあるお言葉は、その後の私に大きな影響を与えてくださることになった。

 遷化されてから十数年が経ったが、忘れられないのが「死を迎え『鬼籍に入る』とはおかしなこと。人は『鬼』ではないぞなもし」とおっしゃったこと。

  独り言は時折に各地の方言が混じり楽しいものだったが、碁を通して多くの方々に知られることになり、それを楽しみに対局に足を運ばれた方も少なくなく、そ れこそ檀家さん達をはじめ、多くの方々に素晴らしい説教の一石を投じられた出来事して、私の思い出の中で大切に保存されている「形見」的なお言葉である。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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