最新 最古
2006-01-11

エラー&コレクト  NO 1391


 タバコが日本専売公社の時代だから随分昔の話だが、大阪から京都に向かうJRの車窓から、タバコのCMが見えていたのを記憶している方も少なくないだろう。

 そのキャッチコピーが「今日も元気でタバコがうまい」だったと思うが、今の時代なら、さしずめ「が」が「か」に変わり「今日も元気でタバコ買うまい」になるだろう。

 それは、当時から話題になっていたが、喫煙しない人達には、そう見えていたような気もする。

 人は、経験したこと、記憶していることで勝手に想像をしてしまうもので、それらは「思い込み」からとんでもないミスにつながる危険性を秘めており、喜劇を飛び越し、悲劇を生むこともあるので気をつけたいものである。

 名古屋の塾生が発信するブログ「葬儀司会者のつれづれなるままに」だが、リニューアルされた最近号の記事に、そんな「エラー&コレクト」というテーマが登場していた。

 エラーは「間違い」、コレクトは「訂正」だが、それは、彼女が大学時代に取り組んだ卒業論文のテーマでもあったそうで、上述したようなことを心理的過程について触れ、中々興味深い内容であった。

交わされる会話の中での行き違い、言葉の伝達の間に生じる誤解の行き着くところ、それは、これまでくどいほど書いてきた「?」と「if」のキーワードに通じるような思いがする。

 礼状や挨拶状の印刷にあって故人、喪主、委員長のお名前の間違いも怖いもの。また、ご供花の電話受注でも危険がいっぱい秘められている。それらは発生して学ぶものではなく、発生させないような配慮が求められる世界である。

 弔電の会社名や個人名、ご遺族や親戚さん達の焼香順位、そして団体指名焼香に記された芳名の読み間違いは反省では済まなく後悔が残るし、全国の市町村名に至っては信じられない読み方が山ほどあり、ここでの思い込みは「地名」が「致命」ともなるだろう。

「これ、何と?」と喪主さんに確認に行く。「誰も読めないでしょう。**と読むのです」とか、時には由来を教えていただくこともあり、すぐにナレーションの一部に取り入れることも出来る。

 和歌山県に「周参見(すさみ)」という地があるが、司会者向けのセミナーを開催していた時、「失敗談は?」という質問に、弔電代読で次のような体験談があった。

「周参見 ****とあったのです。それが地名とは知らずに『中国、しゅうさんけん様、****様と言ってしまい、後でご遺族から笑われ真っ赤になりました』

 これも単純な思い込みからであろうが、ご丁寧に「中国」までサービスしてしまっている。「河内」でも「かわち・こうち・かわうち」の読みがある。それを<?>なしで通過するのが恐ろしいのである。

 北海道の地名に「富武士」という所がある。「とっぷし」と読むのだが、日頃のテレビCMの影響でサラ金の「武富士」と思い込む可能性が高いだろう。

 昔、指導していた司会者が、開式前に喪主さんに弔電の確認に行って笑われたことがあった。ある省庁の名が「姓」で名前が「主税」だった。もうお分かりだろうが、大蔵主税さんを「大蔵省の省が脱字では?」と聞いたからだ。

 主税とくれば赤穂浪士の「大石主税」を連想しそうなものだが、若い人達にはピーンと来なかったのかもしれない。

葬儀のプロ司会者は、ハプニングをハプニングでないように解決出来なければならないが、自らハプニングを発生させないようにすることから学びたいものだ。

 今日の結びに、苗字で信じられないものが多くあるが、遠い昔に「釈迦牟尼佛」という苗字があったそう。これで「みくるべ」と読むのだが、何か意味有りげな苗字である。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
携帯で下のQRコードをスキャンするか
 または
携帯に下のURLを直接入力します。
URL http://m.hitorigoto.net